第十三幕 17 『姫騎士2』


 ジークリンデ王女を客室へと案内して……現在、そのまま彼女と部屋の中で話をしているところだ。


 少しお話したいな……と思っていたところ、相手もそう思っていたようで『少し話ができないだろうか?』と言われたので了承して今に至る、というわけだ。





「カティア王女の勇名は、デルフィアまで轟いております」


「……何だか恥ずかしいですね。お転婆ぶりを知られてると言うのは……」


「ははは!何を仰いますか。上に立つ者が正しき力を持つ事は、民にとって頼もしき事。かの英雄王を擁し、新たな英雄であるカティア様もおられる……イスパルの民は幸せでしょう」


「そう言っていただけるのは嬉しいですね」


 民を護ると言うのは最も大切な王族の務めの一つ。

 そこを評価してもらえるのは素直に嬉しいことだ。


「私もこんな格好をしてるくらいだから、剣の腕はそこそこある……と自負しているのですが。カティア様は個人の武勇も相当なものと聞きます。何でもお父上と戦って引き分けたとか」



「武神祭の時ですね。確かに父と試合をした結果は……お互いに武器が耐えきれず引き分けになりました。……しかし、ジークリンデ様こそ『そこそこの腕前』、と言うのはご謙遜でしょう?初めてお目にかかったときから……強者のオーラを感じましたから」


 ただ歩く姿を見ただけでも、よく鍛えられているのが分かったくらいだ。

 酔狂で騎士の格好をしてるわけじゃない。

 確かな実力を持った騎士であると断言できる。



「私などまだまだ未熟者ですが……しかし、最近は実戦に身を置く機会も増えました」


「実戦……?」


 私は人のこと言えないけど、王女様が実戦経験する機会が早々あるのだろうか?



「『異界の魂』……我が国にもそれが出現し、何度か討伐隊の指揮をとったのです。そして私はエメリリア様のシギルを受け継ぐ最大戦力でもありますら……直接相対もしています」


 そうか、デルフィアにも出現してるんだね。


 以前、王都近郊で出現の報を受けたときは空振りで、それ以降は近場には現れていないけど……広くカルヴァード大陸各地においては結構報告が上がっている。

 幸いにも大事に至ったと言うのは聞いてないけど。


 そして、以前の私達のように空振りだったという話もチラホラとあったらしいけど……恐らくそれは『調律師』が確保に動いた結果である可能性が高い、というのが今では各国の共通認識となりつつある。



「あれも……カティア様たちの戦闘経験に基づいた情報が無ければ、多大な被害を出していたはず。今回の訪問では、そのお礼も言いたかったのです」


「お役に立てて良かったです。しかし……『異界の魂』を直接相手出来るのですから、やはりお強いのですね」


「まぁ、将を任される身ではありますから……。そうだ、カティア様。もしお時間が取れましたら、手合わせしていただけないでしょうか?」


「あ、良いですね。私もジークリンデ様と手合わせしてみたいです」


 肌で実力者であることは感じられるけど、やっぱり実際に戦ってみないと正確なところは分からないからね。

 あの夢で見た魔王の力も底が知れないし……出来るだけ実力を上げておきたいと思っていたから、渡りに船である。

 なんと言っても、力をつけるためには実力者との戦いを重ねるのが近道だと思うよ。



 そして、その後も少し話をしてから、私はジークリンデ様の部屋を辞した。









 城内は俄に活気付いている。


 国内外から会談のために多くの人がアクサレナに集まり、お義母さま達のような賓客やその側近を王城で受け入れているから当然だろう。


 忙しそうに使用人たちが往来するのを見て、いよいよ会談の開催が近いことを感じるのだった。


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