第十二幕 49 『開花』
調律師の異能の力によって息を吹き返した……どころか更なる進化を遂げた黒魔巨兵たち。
先程までは、テオの
しかし、進化した巨人達の攻撃は先程までとは比べ物にならないくらいに強烈であり、その暴威はとどまることを知らない。
『ガァーーーッッ!!!』
両腕を天に突き上げ咆哮する巨人。
そして、そのまま勢いよく振り下ろして地面に叩きつける!!
ドゴオーーーンッッッ!!!!!
訓練場の地面が大きく抉られて大量の土砂が周囲に撒き散らされるとともに、瘴気混じりの『氣』が爆散する!!!
「「「うわぁーーーっっっ!!!??」」」
直撃は免れたものの衝撃波に巻き込まれた多くの騎士たちが吹き飛んでいく!
「ちっ!!負傷者は無理せず後方に下がれっ!!前線は交代しながら維持せよっ!!!」
「この場所は死守するのです!!絶対に市街に出してはいけません!!!」
「外壁から
父様やリュシアンさん、隊長クラスの騎士たちの指示が怒号となって飛び交う。
巨人に抗しながらも調律師への攻撃を行っているが、魔法も弓矢もあの黒い波動に阻まれて攻撃が全く届かない。
巨人たちも、父様たちの攻撃はまだ何とか通るのだが、あの凄まじいまでの再生能力も復活してしまっているため、ダメージを与えても即座に回復してしまう。
調律師のあの黒い波動がある以上、今度は再生回数に限度が無い恐れすら考えられる。
そんな状況の中、私は支援を切らす訳にもいかず動けないでいた。
ーーーー 学園 某所 ーーーー
アリシアは他の生徒と共に避難していた。
戦いの場からは遠く離れているはずだが、激しい戦闘の音が遠雷のように轟くのがここまで聞こえてきている。
そして、カティアの美しい歌声も。
「……カティアさんの歌、感情が伝わってくる。これは……焦り?」
アリシアはカティアの歌声を通して彼女の焦りの感情を敏感に感じ取っていた。
そして、自らも何かしなくては……という想いが強くなる。
先ほど初めて[絶唱]の力を肌で感じたときから……自分の中の何かが目覚めようとするのを漠然と感じていた。
それが使命感によって突き動かされ急速に形になっていく。
(……できる。私にも)
「どうしたの、ぼーっとして?」
アリシアの様子を訝しんだクラスメイトが声をかけてきた。
「……メイちゃん、[拡声]って使える?」
「え?う、うん、使えるけど……」
「私に使ってくれない?最大威力で」
突然のアリシアのお願いに友人は戸惑うが、彼女の真剣な様子に疑問を飲み込んで詠唱を始めた。
『……風の精よ、彼の者の声を彼方へと導け……[拡声]!!』
[拡声]の発動を確認して、アリシアは目を閉じて意識を集中し始める。
今も街を……多くの命を守る為、必死に戦っている人達の事を思い浮かべながら。
(……分かるわ。どうすれば良いのか。カティアさんの歌声が私を導いてくれる!)
そして今……アリシアの秘められた才能が開花する!!
(発動…………[絶唱]!!!)
閉じていた瞳を開き、美しい歌声が響き渡る。
そして、アリシアの身体から淡い金色の光が放たれ漣となって広がっていく!
それは歌声が届く範囲に隅々まで行き渡り、聞いた者の魂を揺さぶる。
避難していた生徒たちが驚きで騒めく中、アリシアは一心不乱に歌い続ける。
ーーーーーーーー
調律師と黒魔巨兵との戦いの最中、私のものとは異なる歌声が聞こえてきた。
それとともに光の漣が戦場に押し寄せる。
これは……まさか……[絶唱]の歌声!!?
一体誰が……何て疑問は直ぐに霧消する。
この声はアリシアさんだ!!
私の歌声とハーモニーを奏で、2つの[絶唱]の力が共鳴する!!
それはこの戦場で戦う者たちに新たな力を与え、そして……アリシアさんの歌声に導かれるように、私の身体の奥底からなにかが湧き上がるような感覚を覚える。
内からこみ上げる衝動に突き動かされるように、私は
そして、戦場は眩い光によって満たされた……!
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