第十二幕 48 『調律師』
巨人たちとの戦いは、ルシェーラ達の加勢もあって優勢に進んでいた。
驚異的だった再生の能力も今は目に見えて落ちているので、巨人の装甲は損傷が目立ち始めてる。
何とかこのまま押し切れそうで、勝利は目前だ。
……そう、思っていた。
「でりゃあーーーっ!!!」
ザンッ!!
父さんの大剣の一撃が巨人の右腕を切り飛ばす!!
「これで最後よ!!はっ!せいっ!!」
そこにシフィルが止めとばかりに無数の爆裂魔弾(一本銀貨50枚)が放たれる!!
ドォンッ!!ドゴォンッッ!!ドドーーンッ!!
『ぐがあ……!』
幾つもの爆発音が鳴り響き、巨人の身体中に穴が空き……たまらず巨人は地に膝を付いた!
一方のルシェーラとリュシアンさんの婚約者コンビは、息の合った連携を見せる。
「はぁーーーっっ!![練気剛断]!!」
ザスッッ!!!
巨人の攻撃を掻い潜り、振るわれた腕を踏み台にして上空へ大きく跳躍したルシェーラは、『氣』を纏ったハルバードを大上段から一気に振り下ろした!!
『があああーーーーーっっっっ!!!??』
肩口から一直線に下に向かって大きく切り裂かれた巨人は、苦悶の声を上げる!!
そして、更に……!
「止めです!![銀閃乱舞]!!」
リュシアンさんの槍が無数の銀の閃光となって巨人に襲いかかる!!
そして、全身を穴だらけにされた巨人は……
ズズンッ……!!
大きな地響きを立てて、うつ伏せになって地に倒れるのだった!
そして、最後の一体も……
「『銀矢驟雨』!!」
『アォーーンッッ!!!』
騎士たちが一旦離れたタイミングを見計らって、ステラは無数の銀光の矢を放つ!
それは山なりの軌道を描いて雨あられと巨人に降り注ぎ、その間を縫うようにポチが爪の斬撃を幾度となく見舞う!
『ぐごぉ……!』
飽和攻撃に晒された巨人が身体中に細かな傷を負って怯んだその隙を狙って……
「喰らえっ!![剣閃]!!!」
父様の大剣から放たれた衝撃波が巨人の胴体を水平に薙ぎ払う!!
ザシュッ!!!
剣閃は巨人の腹部を大きく切り裂いて、血飛沫が舞った!!
そして、大ダメージを受けた巨人は、腹の傷を押さえて蹲る。
よしっ!!
巨人は3体とも戦闘不能なくらいのダメージを負った。
あとは止めを……!
そして、騎士たちが総力を上げて止めを刺そうとした、その時………!
「ふふ……中々やりますね。ですが、ここからが本番ですよ?」
何者かの声が聞こえた。
大きく叫んでるわけでもないのに、その声は戦場の喧騒の中でもやけに響き渡ってその場に居た全員がそれを聞いた。
「何者だ!!?」
「上です!!」
その声の元を辿ると、上空に人影か浮かんでいるのが見えた。
白銀の長い髪。
黄金の瞳。
その顔は……シェラさん!?
……いや、違う。
良く似ていたが、シェラさんよりも少し幼く見えた。
と言うか、彼女は……
「その声……『調律師』かっ!!!」
そう。
これまでフードで顔が分からなかったけど、その声は確かに『調律師』のものであった。
「シェラはどうしたんだっ!!?」
テオが調律師に問う。
そうだ、調律師はシェラさんと戦っていたはずだ!
まさか、シェラさんが倒されたのか……!?
「『堕天使』……姉さんは今頃夢の中でしょうね。殺してはいないから安心してください」
「姉さん……だと?」
シェラさんが調律師のお姉さん!?
と言う事は、彼女は……
「改めて名乗りましょう。私は黒神教七天禍が一柱、『調律師』のヴィリティニーアと申します。あ、愛称は『ヴィー』とか『ティニー』とか呼ばれてますよ」
愛称は別に聞いてないけども。
しかし、教団の重要人物とか自分で言って、これまで戦闘を避けていた彼女がこうして堂々と姿を表すのは……何かイヤな予感がする。
「……ご自慢のデカブツはもう虫の息だぜっ!!今頃のこのこ出てきて、どうするってんだ!!?」
「ふふ……ですから、これからが本番と申してるでしょう?……さぁ、黒魔巨兵たちよ。あなたたちの真の力を見せてご覧なさい」
そう言って彼女は目を閉じて集中し始める。
すると……彼女から、キィィン…という甲高い音ともに、『黒い光』とでも言うべき禍々しい波動が放たれた!!
「な、なんだ!?」
「何が起きるんだ!?」
「何という禍々しい波動ですの……」
「くっ……近づけない!」
[風神招来]で飛翔していたシフィルが接近戦を試みるが、黒い波動に阻まれて近付けない様だ。
彼女やステラも矢を放つけど、相手に届く前に不可視の障壁で阻まれる。
そして……
黒い波動を受けた巨人たちからも、凄まじい勢いで瘴気が溢れ出す!!
殆ど虫の息だった巨人たちは、あっという間に傷口も塞がって再び立ち上がる。
さらに、その身体が変容していくではないか!
黒はより黒く、光を飲み込むほどの漆黒へ。
甲虫のような装甲は無数の鋭い棘が全身を覆い尽くし、いっそう禍々しさが増す。
噴き出した瘴気はその勢いを減じるが、薄っすらと全身を覆って安定した。
そして、先程までとは比べ物にならない力を感じる……!
「さぁ、黒魔巨兵よ。この者たちを滅して、アクサレナを灰燼に帰すのです!!」
くっ……!
ここで食い止めなければ、本当に王都が壊滅しかねない……!
滅魔の力を持つ私も戦列に加わったほうが良さそうなんだけど……支援を止めたら一気に瓦解しかねない……
一体どうすれば……?
『『『グオーーーーーンッッ!!!』』』
内心で焦る私をよそに、新生した黒魔巨兵たちは雄叫びを上げて再びその猛威を振るい始めるのだった!!
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