第十二幕 47 『集結する力』
3体の『黒魔巨兵』は未だ健在。
しかし、その進行はこちらの思惑通り着実に学園に向かっていた。
私とテオもそれに合わせて移動しながら支援を続ける。
騎士たちに負傷者はいるが、死亡者の報告は無い。
神殿から治癒魔法を使える神官たちが応援に駆けつけ、治療に当たってくれる。
そして比較的軽症で傷が直ぐに癒えた者は、再び戦列に加わって巨人の進行をコントロールするのだ。
そうやって総力を上げて戦い続け……
ついに巨人は学園へと足を踏み入れた!
父様と父さん、リュシアンさんがそれぞれ巨人に大ダメージを与えて注意を引き付け、更に野外訓練場に誘導しようとする。
「オラァッ!!!こっちだデカブツ!!」
大振りの巨人の腕を躱し、それを踏み台にして大きく跳躍した父さんが巨人の腹を横薙ぎに切り裂く!!
『ぐがぁぁーーーーっっっ!!!?』
大きく切り裂かれた腹部から紫色の血が噴き出す!
……よしっ!
再生速度が落ちてきたね!!
これなら……!
そして3体の巨人は野外訓練場に到達した。
「はぁーーーーーっっ!!!」
ざすっ!!!
『ぐごぉーーーーっっ!!』
ハルバードの一撃が巨人の腕を切り飛ばした!!
って、ルシェーラ!?
避難しなかったの!?
「ルシェーラ=ブレーゼン、加勢いたしますわ!!」
「ルシェーラ!!無茶しないで下さい!」
「リュシアン様!今の私は一介の騎士とお考えください!!どうかご指示を!!」
決然と言い放つルシェーラ。
まぁ、彼女の実力なら戦列に加わるのは問題ない……どころか強力な助っ人だ。
リュシアンさんもそれは分かってるので、婚約者を心配する気持ちを押し留めて指示を出す。
「私と一緒に一体仕留めますよ!!」
「はいっ!!」
こんな状況だというのに、ルシェーラはにこやかな表情で返事をする。
愛する婚約者と肩を並べて戦うのが相当嬉しいらしい。
巨人の一体をリュシアンさんとルシェーラのタッグが相手し始めたとき、別の巨人に向かって上空から無数の矢が飛来する!!
今度は……シフィルか!!
あの娘も……全く、後で先生に怒られても知らないよ?
「シフィル=エルジュ、義によって助太刀致す!!」
……時代劇か。
それはともかく、彼女のオリジナル魔法[風神招来]で空を駆け、巨人の頭上から矢を放つが……普通の矢では巨人の装甲は貫けない。
そう思っていたら……
ドゴォンッッ!!!
ドオーーンッッ!!
『ぐがぁーーーっっ!!??』
何本かの矢が巨人に突き刺さった瞬間、大爆発を起こした!!
魔法!?
いや……これは……
「どう!?取って置きの『爆裂魔弾』の威力は!!一本銀貨50枚の使い切りよ!!」
どうやら魔道具の矢のようだった。
魔法の効かない相手と知って切り札を使ったようだ。
でも、涙目になるくらいなら素直に避難しとこうよ……
「よし、シフィル!!そのまま援護頼んだぞ!!」
「ええ!!任せてください!!」
そして、その巨人には父さんとシフィルの連携で集中攻撃する。
即席のコンビだが、なかなか息が合っていた。
「[銀矢連弾]!!」
『わぉーーーんっっ!!』
今度はステラだ!!
そして、ポチもキター!!
ステラが
ポチも負けじと縦横無尽に駆け回ってその爪を振るい、装甲を切り裂く!!
「おお!!ステラ王女か!!なかなかやるではないか!!」
強力な支援を得た父様は、一気呵成に攻めたてる!!
大剣の連撃に巨人は堪らずに防御姿勢となった。
既に3体とも再生速度は目に見えて遅くなっており、ルシェーラ達の加勢もあって、このまま押し切ってしまえそうな勢いだった。
ーーーー 学園 某所 ーーーー
「うぅ……せっかくガエルに送ってもらったのにぃ……。私ってば何でまた迷子になってるのっ!?」
そもそも……もう長いこと生活している学園内で、なぜ未だに迷子になるのかが不思議である。
「むぅ……でも、ここも安全そうだし、動かないほうが良いのかな……」
さてこれからどうしたものか……とメリエルが悩んでいると、彼女はふと何かに気が付いた。
「……ん?……!!?誰か倒れてる!!」
地面に横たわる人影を見つけたメリエルは急いで駆け寄る。
うつ伏せに倒れていたのは、顔は見えないが長い白銀の髪と体型からしておそらく女性だ。
メリエルは彼女を介抱しようと抱き起こそうとする。
すると……
(ふわぁ……凄い美人さんだよ……っと、それどころじゃないよ!)
抱き起こして顔を見たメリエルは、その美しさにおもわず見惚れそうになるが、それどころではないと気を取り直して彼女の容態を確認する
(ん〜……見たところは怪我とかはしてなさそうだけど……)
すると、女性が気が付いたらしく、薄っすらと目を開ける。
その瞳は黄金に輝いていた。
「うぅ……」
「だ、大丈夫!?しっかりして!!」
「まさか……あれ程の力を……だれか……あの娘を止めて……このままでは……」
朦朧としながら呟く女性。
それを聞いたメリエルは、何か深刻な事態が起きるような……そんな予感にその身を震わせるのだった。
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