第十幕 46 『流星の戦い』
「へえ……驚いたね。油断してるところを暗殺するなんて簡単でつまらない仕事だと思ってたけど……中々楽しめそうじゃないか」
そう、楽しそうに言う『奇術師』。
こうして目の前に相対しても…ともすれば見失いそうになるほどに掴みどころのない気配だと感じる。
「ミーティアちゃん……その姿はいったい…?」
「お婆ちゃん、その話は後で!!コイツの相手は私がするから、お母さんとお父さんを護って!!空間魔法を駆使して奇襲してくるから注意してね!」
「わ、分かった!!」
訳が分からないうちにミーティアの勢いに飲まれてお義母さまは返事をする。
「ハンネスお爺ちゃん!!他の皆には下手に手出しさせないで!!犠牲が増えるだけだから!!」
「…!!し、しかし…」
「ミーティア!!」
「大丈夫だよ、お母さん、お父さん。私は戦える!!」
ミーティアはそう決然と言い放ち、『奇術師』と対峙する。
私達のやり取りを黙ってみていたヤツは、態とらしく感心したような口振りで話しかけてきた。
「ほうほう、あの時のお嬢ちゃんが随分立派になって。……ならば、敬意を表して名乗ろうではないか。黒神教の最高幹部…『七天禍』が一柱、『奇術師』レイモンドとは僕のことだ!」
そう言いながらヤツはローブを取り払って正体を現した。
魔族の特徴と思しき白髪金瞳の優男。
現実離れした美貌には、それに似つかわしくない軽薄そうな笑を浮かべている。
しかし…『七天禍』とか二つ名とか、厨二臭いなぁ……
「私は『
み、ミーティアさんっ!!??
敵に合わせなくても良いんだよ!?
地味にママにもダメージが入ったよ!
って言うか、『星光の護り手』って……
そっとテオを振り返ると。
「……俺の二つ名だ。Aランクになった時の」
渋面でそう答える。
そう言えば、
お揃いっぽくてちょっと嬉しいと思ったのは秘密だ!
と、ともかく…『奇術師』と『流星』の戦いが始まる!!
「[無限軌道]!!」
先ずは『奇術師』が先制する。
以前のシェラさんとの戦いで見せた技……短距離転移を延々と繰り返す無数の
「[黒牢]!!」
対するミーティアは、シェラさんと同じく重力の魔法で尽く短剣を吸い寄せた。
ガキィッ!!
「おっと!!やらせないよ!!」
ミーティアへの攻撃に紛れ、私達を狙った『奇術師』の攻撃をお義母さまが防いでくれたようだ。
空中に現れた魔法陣から、短剣を持った手が伸びてきて攻撃してきたのが一瞬だけ見えた。
「空間操作の魔法か……今のは防げたけど、油断ならないね…!」
…というか、よくお義母さまは防げるね。
魔力の揺らぎを瞬時に読み取ってるのか?
流石はAランクの実力者ということなのだろう。
「これならどうだい?[神帰回廊・連]!」
転移魔法か!
魔法行使と共に姿を消し……次の瞬間、何人もの『奇術師』が現れて、ミーティアとお義母さま、私達に襲いかかる!
「小賢しい!!そこだ!!」
ギィンッ!!
私を狙っていた『奇術師』が振るった斬撃を、お義母さまが受け止めてくれた。
どうやら高速かつ連続で転移を繰り返して、あたかも分身したかのように見せかける攻撃だったようだ。
「私の護りはその程度じゃ抜けないよ!」
す、凄い……
Aランクの中でも更に上位の力を持ってるんじゃ無いだろうか?
それこそ父さんやティダ兄と同等クラスだ。
「せやぁーーっ!!」
攻撃を受け止めただけでなく反撃するが、それは躱されてしまう。
だが、後方に飛び退った『奇術師』が着地する瞬間を狙って、ミーティアの双剣が襲いかかる!!
「はっ!!せいっ!!」
ヒュンッ!!
カキィンッ!!
一刀目を身体を捻って躱し、二刀目は短剣で受け止める。
だが、ミーティアの連撃はそれで終わらず、高速かつ変幻自在の斬撃が流星のごとく叩き込まれる!!
「これはこれは、本当に楽しませてくれるじゃないか!いいぞ、もっと僕を楽しませてくれ!!」
怒涛の攻撃を紙一重で躱し、弾き、時には反撃しながら…愉悦の表情を浮かべる『奇術師』。
……やはり強い!!
ミーティアが押しているように見えるが、まだまだヤツには余裕がある。
双剣の連撃に加えて、
どうにかして不意を突かなければ、一撃を与えることは難しいだろう。
何か…もう一手無いものか……
すると、ミーティアは一旦間合いを外して、何かに集中するかのように目を閉じる。
そして、カッ!と目を見開き……
「
その言葉とともに、彼女の身体から青い光が溢れ出す!
これは…まさか!?
私の考えを肯定するように、ミーティアの前には剣と盾を象ったような光り輝く印が現れる!!
やっぱり……ディザール様の
ミーティアの身体を覆っていた青い光は、彼女が手にした双剣に凝集され、より鮮烈な輝きとなる。
しかし、まだそれで終わりではなかった。
「
今度は、翼を象ったような印……リル姉さんの
金にも銀にも見える不思議な色合いの光が、先程と同じように双剣に集まる。
双剣を纏う光は、これ以上無いくらいに眩く輝く。
あれは…かつて私が『獣騎士』を滅ぼした滅魔の光だ。
まともに当たれば『奇術師』もただでは済まないはず。
これが決め手になってくれれば……!
私は、祈るような気持ちで戦いの行く末を見届けることしか出来ない。
しかし、ウチの娘は厨二病を発症してしまったようだね……
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