第十幕 24 『ステルス義兄さん』
「して、カティア姫よ。そちらの子がミーティアかな?」
「あ、はい。私の養子で……テオのことも父と慕ってくれています。ミーティア、ご挨拶をなさい」
それまで大人しくしていたミーティアを促して挨拶をさせる。
「はじめまして!ミーティアです!」
「うむ、元気で良いな。それに、いい子で待っておったな。……テオフィルスより話は聞いておるが、神の依代と言うことだったか」
ミーティアの事は、父に話しても良いか?とテオに聞かれていたので、問題ないと答えてる。
「はい。ご覧の通り、私の魂の性質を受け継いでるので…実の子供と言っても過言ではありません」
「可愛いわね〜、二人の子もこんな感じになるのかね〜?」
「あ、え、う…こ、子供はまだ早いというか…」
「そんな事ないでしょ。私がテオフィルスを産んだのは、あなたとそう変わらない歳だったんだし」
「まあまあ、フェレーネ。二人のペースというものがあるのだから。焦らせてはだめよ。楽しみにしてるのは分かるけど、あなただってこれから子供が生まれてくるのだから、そっちをたくさん可愛がってあげなさいな」
「それもそうだけど…まあ、気長に待ってるよ」
そ、そうしてください…
「さて、自己紹介が終わったところで……」
「あの〜……僕のことも紹介してもらえないかな〜、なんて……」
「「「あ…」」」
誰?
…と言うかいつの間にそこにいたの?
「お前、いつ帰ってきてたんだ?」
「義兄さんいつの間に…?」
「最初からいたよ…」
最初から!?
え?
認識阻害とか使ってるの?
と言うか、テオが『義兄さん』って…
そうだよ、テオは第3王子なんだから、もう一人お兄さんがいるはず。
すると、この人が?
「我が息子ながら…いてもいなくても存在感が薄いわね」
「と言うか。国境の部隊はどうしたんだ?」
「僕は報告書ですら存在が薄いんですかね?暫く動きもないし、もし動きがあれば飛竜ですぐ戻れるから僕もテオの婚約者に挨拶する…って、戻る前に報告したじゃないですか」
「おお、そう言えばそうだった……か?」
え〜と、メリエルちゃんの同類なのかな?
あっちは誰にも悟られずに迷子になる能力(?)だけど、お義兄さんは存在そのものが認識されにくい…と。
「…フェレーネ義母さんが、「私が最後」みたいな感じで挨拶を始めたから分かってましたけど」
「あ〜、悪い悪い。全く気が付かなかったよ」
「まあ、良いです。いつものことだから。…と、失礼しました。改めてご挨拶を。僕はハンネスとラシェルの次男でテオフィルスの異母兄、第二王子のアルフォンスです。よろしくお願いします」
「よ、よろしくお願いします。……すみません、気が付かずに」
「いえ、いつものことだから気にしないで」
そうは言うものの、その表情には隠しきれない哀愁が漂っていた。
「さて、気を取り直して……これからテオフィルスとカティア姫は正式な婚約関係を結ぶわけだが、面倒な手続きは予め進めてあるし、残った手続きも両国の事務方が殆どやってくれるだろうから、我々は後は調印するくらいだな。」
どんな手続きがされてるのか詳しくは知らないけど、私自身がやることがあまり無いのは助かる。
「カティア姫はイスパルの王位継承権第一位、将来的には女王となられる身。故に此度の婚姻はテオフィルスが王婿としてイスパルに入る。これはよろしいか?」
「ええ、そのご認識で問題ありません」
まあ、ここに至ってまだ覚悟ができていないとかは言えないからね…
「この婚姻は当人同士の希望によるものだが、国としても結束を強くするためにも式典を催し、調印はそこで行いたいと考えてる。日程はこちらで調整させてもらって…明後日を予定しているが、問題ないだろうか?」
「いえ、問題ありません。ご調整ありがとうございます」
「うむ。今日のところは旅の疲れもあるだろうし、このあとゆっくり休んでいただきたいが、明日は歓迎のための夜会を予定しているので是非出席頂きたい」
「ええ、承知しておりますわ。何から何まで感謝いたします」
ハンネス様と母様の間でトントン拍子に話が進んでいく。
しばらくそうして今後の予定について確認を行い、私とテオの婚約の話は一段落することになった。
「さて、婚約の話はこれくらいだな。これから滞在の間はゆっくりと過ごされると良い」
「はい、しばらくお世話になります」
「よろしくお願いします。では……もう一つの話については……」
「うむ。グラナの事についてだな。もちろんその話もあるのだが…今日のところはゆっくり休まれるといい。明日に軍議が開かれる予定なので出席してもらいたい」
「分かりました」
そうして、レーヴェラント王家の人々との初めての会合を終えたのであった。
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