第十幕 19 『情報』
暫く空中散歩を楽しんでいると、地上の出発の準備が終わったらしく、手を振って合図しているのが見えた。
「テオ、もうそろそろ出発出来るみたい」
「そのようだな…ん?」
と、私達の周りに先程地上で見た竜騎士達がやって来た。
「何か問題はあったか?」
「いえ。皆様の本日の宿泊地であるメルゲンの町までの間には不審な点はありませんでした」
「そうか。ご苦労だったな。引き続き空からの警戒は頼むぞ」
「お任せください」
と、そこでその竜騎士は私の方に視線を向けて、ビシッと敬礼しながら話しかけてきた。
「カティア姫様、先程はご挨拶が出来ずに申し訳ありませんでした。私はレーヴェラント竜騎士隊所属のスヴェンと申します。以後お見知りおきを。これよりは私達が皆様の旅の安全を空よりお護りいたします」
「こちらこそ、よろしくお願いしますね。レーヴェラントの竜騎士と言えば精鋭中の精鋭と聞いております。頼りにしてますね」
王女様モードで挨拶を返す。
さすがに、はしゃいだままの姿は見せられないからね。
「ハッ!お任せください!」
「スヴェン、俺はカティアの馬車に乗せてもらうことになった。悪いが、ロコの面倒を頼む」
「はい、承知いたしました。ロコは特に賢いから手がかかりませんですけどね」
『キュオッ!』
その通り!って言ったのかな?
「先ずは改めてお礼を言わせてね。カティアを助けてくれてありがとう、テオフィルス殿。…ふふふ、頼りになる娘婿で嬉しいわ」
「か、母様…まだ結婚してないです」
「あら。もう後は手続きだけの問題でしょう?」
「そ、そうなのかな……?」
地上に戻ってきた私達は、レーヴェラント王都に向けての旅を再開した。
テオも私達の馬車に乗り込んで共に行くことになっている。
「何とか間に合って良かったです。……皆さんを危険に晒してしまい、申し訳ありませんでした」
「その言い様だと、やはりあの襲撃の情報は押さえていた……ということかしら?」
「はい。ただ、情報を入手したのはつい昨日のことです」
昨日の今日で王都から駆けつけて来てくれたんだ。
飛竜じゃなければこんなに早く来れなかっただろうし……改めて感謝しなければ。
「詳しく聞かせてもらえるかしら?」
「ええ。先ず襲ってきた連中ですが…尋問して裏取りは必要ですが、奴らは『黒爪』と呼ばれる暗殺者集団です」
「暗殺者集団……以前、私のお披露目パーティーで襲ってきた奴らと関係が…?」
「ああ、おそらくな。そして、今まで俺に差し向けられてきた奴らもそうだったと思われる。恐らくはレーヴェラント国内に拠点を持ち……これも推測だが、グラナと繋がり…ひいては『黒神教』と繋がっている」
まぁ、そうだろうね。
これまでの経緯を考えれば、そう思うのが自然だろう。
「目的は
「はい。離間工作の一環だったのでしょう。そう考えれば、グラナの侵攻は現実味を帯びてくる」
なるほど。
グラナにしてみれば、レーヴェラントに侵攻するにしても、同盟国同士の結束が邪魔ってことか。
レーヴェラント国内でイスパルの王妃と王女が殺されたとなれば、両国の関係に綻びが生じる…と。
「……何か、このタイミングで来ないほうが良かったのかな。色々面倒をかけちゃうよね…」
「いや…しっかり対処ができるのなら、むしろ国同士の結束を強めることができるから…それは何とも言えないところだな。……俺としてはカティアを危険に晒すようなことはしたくないが」
「でも、早く早くテオには会いたかったし」
「俺もだ」
「テオ…」
「カティア…」
………
……
…
「あらあら、見つめ合っちゃって……お熱いこと。ね、ミーティアちゃん」
「うん。パパとママは仲良しなの」
はっ!?
危ない危ない……
母様達がいるのに二人の世界に入るところだったよ。
「ん〜、コホン……そう言えば、どうやって襲撃の情報を入手したの?」
「あ、ああ…それは……」
と、そこでテオはニヤリと笑う。
へぇ…こんな表情もするんだ。
そんなテオもカッコいいなぁ〜…
「俺の方にも暗殺者が来たからな。返り討ちにして色々と情報を吐かせた」
「だ、大丈夫だったの!?」
「じゃなければここに居ないな」
「そりゃそうだ……って、前もこの会話したね」
あれはテオの素性を初めて聞いたときだったか…
なんだか凄く昔のことのように思える。
「あのとき話した通り、お前と一緒になるためには脅威は排除しなければならない。そう思って、てっとり早くこちらから仕掛けてみたんだが…思いの外成果が上がった。かつて襲ってきた者たちは、口を割る前に自害したり殺されたりだったから…そのあたりも細心の注意を払って念入りにな…」
うわ〜……めっちゃ
目がマジだよ。
…でも、そんなテオも良いね!!
「あらあら、カティアったら……テオフィルス殿なら何でもいいのねぇ…」
そ、そんな事は……あるかも?
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