第十幕 18 『空に舞う』
「ねえテオ、この子テオの
「ああ。昔世話して懐いたやつでな。数年ぶりの帰城でも覚えてくれてたんだ」
「わ〜、賢いねぇ〜。触ってもいいかな!?」
「パパ〜、私も〜」
「大丈夫だ。大人しいし人懐っこいから」
戦闘の事後処理をしている間、私とミーティアはテオの騎竜を見せてもらっていた。
私は割と動物全般が好きなのだが…モフモフはもちろん爬虫類とか両生類も好きな方だ。
トカゲとかヘビって、苦手な人は多いけど、顔は結構愛嬌があって可愛いと思う。
ミーティアも興味津々だ。
飛竜はサイズが大きいけど、見た目は翼が生えたトカゲみたいな感じ。
硬質な鱗が体を覆っていて、長い尻尾と太い後ろ脚を持ち、前肢が進化して大きな翼になっている。
頭部は体に比べて小さいが、牙がびっしり生えた大きな口をしていて中々恐ろしげではあるが、
爬虫類っぽい特徴を持つが、れっきとした竜種の端くれで、冬の寒さにも強いらしい。
「こんにちは、ロコくん?」
「ああ…そいつはメスだな」
「ロコちゃんか。よろしくね」
「よろしくなの!」
『キュオォーー!』
私とミーティアが近付いて挨拶すると、高い声で鳴いてから鼻先を擦り付けるようにしてきた。
本当に人懐っこいんだね。
可愛い。
喉元を撫でてやると目を細めて気持ち良さそうにしている。
可愛い。
「う〜ん…可愛いなぁ…いいなぁ飛竜……ウチも飼いたいなぁ…」
「飼いたい!」
二人して犬猫のようなノリで言うが、お世話が比較にならないくらい大変なのは理解している。
「それなら…俺がイスパルに行くときに一緒に連れて行ってもよいが…」
「本当!?…母様、いい?」
「おばあちゃん…いい?」
犬猫飼ってもいい?みたいなノリで二人で母様の方をチラチラ見る。
あざとく上目遣いも忘れない!
「…そんな顔をしなくても別に構わないわよ。レーヴェラントほどじゃないけど、うちにも緊急用に飛竜はいるから飛竜舎は有るわけだし」
母様は苦笑しながら了承してくれた。
ひゃっほい!!
「そんなに気に入ったのなら…乗ってみるか?二人くらいなら一緒にn……」
「「のるっ!!」」
テオの提案に、二人揃って被せ気味に返事をする。
空を飛ぶのは昔から人間の夢だったんだから、当然でしょ!
ということで、テオの前に私。
更にその前にミーティアを乗せてもらう。
ロコちゃんに付けられた鞍は何とか3人乗るくらいは出来るが、それでもやや手狭なのでピッタリと身体が密着する。
そして、転落防止の命綱をそれぞれ括り付けて…いざ天空の彼方へ、れっつらご〜(死語)。
私達を乗せたロコちゃんは、多少重量が増えたくらいはものともせずにグングンと力強く空に舞い上がる。
「わわっ!……凄い凄い!!」
「とんでる〜!!」
母娘揃って大はしゃぎだ。
あっという間に上空まで昇った私達は、一行を遥か下に見下ろす。
ちょっと怖い気もしたけど……テオがミーティア共々ギュッと腕の中に抱いてくれてるので安心して身を委ねている。
「どうだ、カティア?空の上は初めてだろう?」
「うん!ちょっと怖いけど、それ以上に爽快だね!やっぱり空は広いね」
「パパ、ママ!!とおくまでよく見えるよ〜」
本当にすごい景色だと思う。
前世の飛行機の方がもっと高いところを飛ぶんだけど……遮るものが全く無いから景色の見え方が全然違う。
これから峠越する山の頂上よりも更に高く、360°の大パノラマが広がる。
あれ?
そう言えば……
「何か、もっと上空は寒いと思ったんだけど、全然そんなことないね。風も穏やかだし……もしかして結界が張られてる?」
ただでさえ季節は冬であるし、これだけ高度が高ければ当然気温も相当低くなると思うのだけど、むしろ馬車の中より温かい気がする。
魔力の流れを感じたので、おそらくは何らかの結界が周囲に張られているのだと思ったのだ。
「ああ、ロコが気流操作と温度調節の魔法を使ってるんだよ。飛竜が本能的に使える原初魔法ってことらしい」
「へえ〜、知らなかった……凄いんだねぇ、キミ」
「ロコちゃんすごいの!」
『キュアーー!』
私達が褒めると、嬉しそうに一声鳴くロコちゃん。
「言葉も分かるみたいだね」
「ある程度はな。言葉を理解してると言うよりは、言葉に込められた感情を読み取ってるらしいが。意思疎通は割としやすいな」
「へえ〜……凄いんだねぇ、キミ(2回目)」
「ロコちゃんすごいの!(2回目)」
『キュアーー!(2回目)』
そんなやり取りをしながら…私達は暫しの空中散歩を楽しむのであった。
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