第九幕 43 『合流』
野営地を出発した私達は山頂を目指して山道を進む。
標高はそれほど高くは無いものの、登るにつれて植生は変化していく。
低い所では広葉樹を中心とした雑木林だったが、今歩いているこの辺りは杉などの針葉樹が多くなってきている。
太陽はすでに昇りきって、木々の間から暖かな日差しが射し込む。
時折吹き抜ける爽やかな風が、夜露に濡れて濃くなった緑の匂いを運んでくる。
「いや〜気持ちが良い朝すっねぇ…徹夜明けの頭もスッキリしてくるってもんです」
「ねぇねぇ、何をそんなに話していたの?私とガエルの見張り番の時も他の班の男子も集って盛り上がってたよね?」
「そう言えば、私とクリフ君の時もそうでしたね」
「ま、まぁホラ、そこは色々だよ…」
…男どもが夜通し盛り上がるなんて、ロクな話じゃ無いでしょ。
大体想像はつくよ。
ましてやフリードが中心にいるなら尚更お察しってものだ。
「他の男子はちゃんと寝たの?」
「俺は寝た」
「僕も」
「全く、お前ら付き合い悪いぞ」
ガエル君とクリフ君はちゃんと寝れたんだね。
「僕は無理やり付き合わされましたよ」
え?ユーグは私と一緒に最初の見張り番だったんだけど…
「じゃあフリードより寝てないじゃない!」
「ああ、いえ。流石に最後は寝ましたよ。…明け方近くでしたけど」
「そう、ならまだ良かった…のかな?」
頂上に近づくにつれて道は細く急になってきたが、道中トラブルも無く順調に登っていく。
…昨日はそうやって油断してたらメリエルちゃんが迷子になったんだけど。
なので今日は常に彼女の存在を意識しながら歩いている。
いや、昨日も彼女を囲んで注意は払っていたつもりなんだけど、きっと意識が逸れたタイミングがあったのだろう。
おそらくは認識阻害とか思考誘導とかのスキル(?)だと思うから、それで大丈夫…なはず。
ともかく私達は計画通り順調に行程を消化して行くのだった。
「そろそろ休憩しようか。メリエルちゃんは…よし、いるね!」
「…ねぇカティア、小さなこどもじゃないんだから、これはちょっと…カティアにも悪いよ」
「何言ってるの。手を繋いでもダメ。取り囲んでいてもダメ。なら、こうするしかないじゃない。メリエルちゃんは軽いから全然苦にならないし」
そう。
危うくまた見失いそうになったので、最終手段として私がおんぶして来たのだ。
二人分の荷物は男子に持ってもらっている。
最初はフリードが喜んで名乗りを上げたけど、
て言うか、あんた守備範囲外とか言ってたじゃんか。
それにしても。
背負ったときのあの柔らかな2つの感触……まさか私よりも?
あなたはこっち側の人間だと思ってたのに!
「どうしたのカティア?なんだか怖い顔をしてるよ?」
「な、なんでもないよっ!?」
いかんいかん、絶望が顔に出ていたらしい。
休憩場所に選んだのは少し開けた場所。
周りには木々も少なく、見晴らしが良い。
行く先にはもう目的地の山頂が見え始めている。
振り返ってみれば、昨日よりも更に高度を増してより遠くまで大パノラマが広がる。
流石にここまで登ってくると肌寒く、みんなそれぞれ外套を着込んでいる。
「かなり登ってきたわね。凄い見晴らしだわ…」
ちょっと感動した様子でステラが呟くように言う。
「ホント、雄大だよねぇ…」
そんなふうに景色を眺めながら一息ついていると。
「……お〜い、カティア〜!」
「ん?この声は…」
遠くから呼ぶ声に、今まで登ってきたつづら折れの山道の方を見下ろしてみると、他の班らしき集団が見えた。
目を凝らしてみると見知った女の子…レティがこちらを見上げて手をブンブン振っていた。
どうやら途中からルートが合流したらしく、ここからは一緒になりそうだ。
「レティの班か。あんな遠くから良く分かったね……お〜い!!レティ!頑張れ〜!」
私も手を振り返して激を飛ばす。
「まあ、カティアの髪は目立つからね。遠くからでもバッチリ分かるでしょ」
ああ、それもそうか…
「レティの班ももう少しでここに到着するだろうし、折角だから一緒に出発かな?」
「お?一等賞は狙わないのかい?」
「別にそこまでこだわりはないよ。トラブルが無ければ皆似たようなものでしょ」
「みんな一緒の方が楽しいもんね!ルシェーラやシフィルはどうしてるかな〜?」
「ゴールは一つだからね。そろそろレティと同じように、どこかで合流するんじゃない?まあ、また帰りのルートで別れちゃうけど」
それでも、いつものメンバーが揃うのを楽しみにしておこう。
とりあえずはレティと合流して、昨日の様子とかを聞いてみようかな。
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