第九幕 44 『合流2』


「レティは道中は問題なかった?」


「え?うん、別に何ともなかったけど。私、こう見えてもアウトドア慣れてるし(前世でね)」


 最後は小声で付け加えていたけど、レティも割と前世ではアウトドアはいけたんだね。


「そう言うそっちは…何かあったみたいだね」


 私の表情から察したらしい。

 そんなに顔に出ていただろうか?


「こっちはね、色々あったんだよ…」


 そうして私は昨日の出来事をレティに語って聞かせる。








 …

 …

 ………


「…それはまた随分と。相変わらずの主人公体質だね」


「私のせいではない…と思う」


 その辺は最近自信ない。

 でも、半分はメリエルちゃんだと思うぞ。



「それにしても、流石ね、メリエルちゃん。怪我してるわけでもなさそうなのに、何でおんぶされてるんだろって思ってたんだけど。聞いちゃいけないのかな、と思ってスルーしてたよ」


 レティ班の面々もその言葉にうんうんと頷く。


「うう…恥ずかしいよ、やっぱり……そのままスルーしておいて欲しかった」


「絵面的には自然な感じだけど」


「うれしくないよ!」


 実際には同い年だからね。


 まあ、そうは言っても背中で大人しくしてるのは、自身の特殊体質の自覚があるからだろう。

 彼女を背負って以降は迷子になっていないから有効な手なのは間違いないというのもある。


 あとはメリエルちゃんの羞恥心の問題だ。

 ゴールに近づくにつれて人も多くなってくると思うけど……ドンマイ!


 …って言うか、私も奇異の目で見られてるんじゃないだろうか?







 そんな訳で。

 私達の班とレティの班は休憩後に一緒にゴールを目指して歩みを進めている。

 道中の仲間が増えてとても賑やかになった。



 登山道はどうやら尾根伝いになったみたいで、これまでほぼ登り一辺倒だった道はアップダウンしながら進む。

 道の左右が谷になり木々の切れ間では視界が開けてとても眺めが良い。


 みんな会話をしながらも、折角の雄大な景色を見逃すまいと心持ちペースを緩めて歩いている。



「う〜ん、絶景かな絶景かな!やっぱり山は良いね〜。どうせなら次は海に行きたいけど」


「ああ、それなら…」


 来年にでも皆で海に行こうか、と話をしていた事をレティにも伝える。


「おお!良いじゃない!ラズレーリゾート!皆で海に旅行なんて…是非行こう!」


 レティは凄く乗り気だね。


「でも…レティ、水着とかは抵抗無いの?」


「へ?…う〜ん、どうだろ?今更だし、あまり派手なのじゃなければ別に……女子だけでしょ?」


「そのつもりだけど」


 フリードが何か「俺も俺も!」とか騒いでるけど無視無視。








「あともう少しだね。もうゴールしてる班はあるかな?」


「どうだろ?みんな似たりよったりじゃない?……あ!ほら、あそこ!ちょうど他の班が登って…ってルシェーラちゃんとシフィルのとこだよ、アレ」


 レティが指さした方…私達が今進んでいる尾根伝いの道の先、下から他の道が合流するポイントがある。

 そのもう一方の登山道を登ってくる集団が見えたのだが、その中に見知った顔が二人。

 ちょうど合流地点ではちあわせするタイミングかな?


 向こうもこっちに気がついたみたいで、ルシェーラとシフィルらしき人影が手を振っているので、こちらも手を振り返す。















「カティアさん!皆さんも、お疲れ様ですわ」


「みんなお疲れ〜。…いつものメンバーが勢ぞろいじゃないの」


 更にルシェーラとシフィルの班が合流して、一行はかなり大きな集団となる。


「お疲れ様。二人とも、変わりはなかった?」


「ええ。こちらは順調でしたわ」


「こっちもよ。魔物の一匹でも出てくれれば面白かったのだけど」


 ふむふむ。

 どうやら波乱に満ちていたのはうちの班だけらしい。


 レティにしたのと同じように話をすると、レティと同じような反応をされた。

 どうも私はトラブル体質だと思われてるフシがあるね。


 トラブルの半分は今私が背負ってる人物に原因があるのだけど。

 何故メリエルちゃんをおんぶしているのかについては、話の流れで二人とも察したらしくスルーされた。

 逆に触れられない方がツラいのではないだろうか…?




 ともかく。

 いつものメンバーも合流して、もうゴールは目前だ。

 あと一息、頑張ろう!

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