また、夢の中で会いましょう
サキとマーガレットが温泉に向かった後、ヨゾラはジークと宿屋への帰路へと着いていた。
「ここから旧都ってそんなに遠いの?」
「急いで行っても半日は掛かるな。後、旅をしてるんだから心配することでもねぇかもしれねぇが、宿に忘れ物とかするなよ?」
「その辺は大丈夫だよ。ってかさ、さっきの戦い、なんで最後までやらなかったの? 僕の武装を破壊するのなんて簡単だったんじゃない?」
ヨゾラの質問にジークは一瞬言葉を詰まらせた後に、ゆっくりと返事をした。
「別に決闘じゃねぇんだ。最後までやる意味はねぇだろ。それと乗り気じゃなかったってだけだ」
「必要でもなかったから?」
「そうだ。お前があのサキって言う嬢ちゃんにおんぶに抱っこだったって可能性があったからな。それだと、万が一に龍が暴れでもしたらあの嬢ちゃんが守り切れるとは必ずしも言えない。それは俺やマーガレットだって同じ話だ」
「ふーん」
特に興味が無かった訳ではないが、適当な返事になってしまったヨゾラを、つまらないとジークは勘違いしたようだ、
「悪りぃな、説教臭くなっちまった」
「そんなことはないと思うけど」
すると、ヨゾラの口から大きな欠伸が漏れた。
「そういや、遅い時間だったな。宿までおぶってやろうか?」
「いや、いい。一人で帰れるよ。じゃあ、また明日」
そう言うと、ヨゾラは一足先に宿へ戻ってしまった。
「あんだけ寝たのにまだ眠いのか?」
ジークも明日の準備のために自宅へと帰って行った。
―――――――――――――――
サキが宿へ戻るとヨゾラは既に布団を敷いて眠っていた。ヨゾラを起こさないように、部屋着に着替えると隣の布団へと寝転んだ。
「おやすみなさい。ヨゾラ」
サキはヨゾラの銀髪を右手で二撫ですると、その手の寵愛の証を光らせた。
「《
そして、サキは能力を発動させると共に眠りにつき、ナディアの寵愛能力で作られた空間へと入った。そこは先程までいた宿の一室と似た場所だった。
「遅くなって悪かったわね。ナディア」
すると、先程までヨゾラが寝ていたはずの布団の中からナディアが顔だけを出した。
「んー、待ちすぎてナディも眠くなったなー。サキに何か埋め合わせして欲しいなー」
「あらあら、それは大変ですね。それなら、眠り姫は私に何をして欲しいのですか?」
「じゃあ、ヨゾラ君にしてたみたいに撫でて欲しいな」
「眠り姫がそう仰るならしてあげますよ」
互いにわざとらしく演技をするように言葉を交わし、最後にサキがナディアの頭を撫で、ナディアは嬉しそうにそれを受け止めた。
「ってか、何で遅れたの?」
「マーガレットと温泉に行ってたわ」
「ま、大体予想通り」
予想が当たり、ニヤリと笑うナディア。しかし、今もなお撫でられているので格好は付かなかった。
「今日はヨゾラを見てくれてありがとう。おかげで、新しい能力も使えるようになったわ」
「ん、それはよかった」
「あと、マーガレットが皇妃候補の仕事をちゃんとやれって言ってたわ」
「んー、ちゃんとはやってるよ。決闘を受ける条件がナディの満足する物を贈るってだけで」
「……アイツが何も言わないなら良いのかしら?」
「そだ、明日から少し出かけるからここ使えなくなるから、そこんとこよろ」
「しばらく会えなくなるのは少し寂しいわね。ついでにクロエを見かけたら報告してもらえる?」
「なぜ?」
「行方不明らしいわ。って知らないの?」
「他の都はあんま興味ないし。てか、行く場所はカタリナのとこだから聞いてみる」
「ありがとう、ナディア。いつも頼み事だらけで悪いわね」
「お願いは生きてるうちにしか聞けないからね。そのうち、ナディのお願いもちゃんと聞いて? 今は無いけど」
「この旅が終わったら聞いてあげるわ」
「絶対だよ?」
「ええ、約束よ。明日も大変だからそろそろ寝るわ」
「なら、今日はお開きだね。おやすみ、サキ」
「おやすみ、ナディア」
そして、サキの右手が光ると、サキの身体は光の粒子となり消えていった。
「今日もエレナの姿じゃなかったな」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます