湯冷めしていく二人
マーガレットは聞いた話を整理しようと一度温泉から出てるとサキに「いつもの」とだけ言うと、
サキはその様子を見てマーガレットの上に跨がると、その背中を揉み込み始めた。
「あ゛ー、気持ちいい。つーか、お前って人を生き返らせたりできんの?」
「さすがに、そんなことはできないわ。ナイレンシンに行ったら偶然生きているのを見つけただけよ」
サキはマーガレットの肩甲骨の付け根辺りを強めに揉み込んだ。
「う゛っ、本当の所は?」
「本当の話よ?」
「右手の神に誓えるか?」
「……偶然は嘘ね。生きていることは知っていたわ。けど、一緒に旅をしているのは偶然よ」
サキは問い詰められ渋々答え、マーガレットはその答えに一応満足したようだ。
「つーか、アレイシンの王子を抱えてるとか、反乱でも起こす気か?」
「それはないわ。そもそも私は今の平和が好きだもの」
「それは変わんねーのな」
「私は何も変わらないわよ?」
今度は
「なら、そういう、ことに、しとく、かっ。ふー、お前が隠し事が多いのは今に始まったことじゃねーしな」
「マーガレットのそういう所、私は大好きよ」
「お前、よくそんな言葉を素面で言えるな。こっちが恥ずかしくなるわ。そういや、お前の正体って他に誰が知ってんだ?」
「ヨゾラとアニエスとナディアかしら。カタリナは上手く誤魔化したわ」
「あー、それがいいわ。つか、あの腹黒とヒラヒラも知ってんのか。となると、腹黒がヒラヒラを
「大体合ってるわ。ただ、思ったより早く見つかった所が面白くなかったわ」
「それより、駄猫に告げ口された方が不味かったから、一応マシな方なんじゃねーの?」
「それもそうね」
次にサキはマーガレットの腕を揉み込み始めた。
「それより、旧帝国派の話題って何かあるかしら?」
「もしかして、それを聞くためにアタシにバラしたのか?」
「それもあるわね」
「まー、いいけどよ。ニヶ月くらい前か? クレイズにいた旧帝都派と疑いがあった奴らが都を出てな。それっきりだ」
「帝国中含めてそれだけ?」
「細けーことを含めなければそれだけだな。他の都のことは分かりづれーんだ。奴ら、ここんとこずっと静かですげー不気味なんだよ。他にあるか?」
「他の皇妃候補達の様子は?」
今度はマーガレットの脚を揉むため、太めの太腿から揉み込み始めた。
「一ヶ月くらい前に愛犬が負けてたな。でも、先週くらいの再戦に勝ってから、薄給なのにそいつを雇ったらしいってことか。それと、ビリビリが行方不明って事くらいだな」
「クロエが?」
「お前ら来る直前くらいだ。ランコードから突然消えたらしくてな。次期皇帝様は成人式までに見つかればいいって言って探す気はねーみたいだぜ。んな、もんだからランコードは予備の後釜探しで大騒ぎって所だ。つか、決闘を真面目にやってるのってアタシと愛犬と魚介類と糞忍者と」
「シーナ?」
「の五人だけだな。つーか、あん時はマジで心配したんだぞ? 死体が偽物だと思ったカタリナが何度も能力使ったりしてたし、他の連中も珍しく平静じゃなかったしな」
「それは本当に申し訳ないと思ってるわ」
「だろうな。じゃなきゃ、思いっきりぶん殴ってるよ。けど、そうしなきゃならない事情があったんだろ? それなら、アタシから言う事はねーよ」
「……ありがとう。マーガレット」
サキも丁度簡単な施術が終わったらしく、マーガレットが起き上がると、思いっきり両手を広げて伸びをした。
「んーーっと、久しぶりにされてみたがやっぱり気持ちいいもんだ。また、やってくれるか?」
「いつでもとは言えないけど、このくらいの事ならまたやってあげるわ」
「お、そりゃあよかった。この後どうする? 身体も冷えちまったし、もう一度入るか?」
「いえ、私は出るわ。この都なら冷えてるくらいが丁度いいもの」
「そうか。帰り道、分かるか?」
「二度目よ? ある程度の道は覚えているわ」
「なら、気をつけて帰れよ」
「貴女も上気せないうちに上がりなさいよ?」
それだけ言うとサキは脱衣所へと戻って行った。
「はいはい、分かってるっつーの」
一人残された温泉で、マーガレットは綺麗な星空を見上げていた。
「エレナ……」
ぽつりと溢した言葉と共に目からも涙が溢れ落ちていた。その涙は親友が生きていたことに対する喜びの物か、それとも親友の心の深い所まで触れられなかった悔しさか。あるいはその両方か。
「胸、減ってたな」
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