現実での再戦
夕食も食べ終わり、再び広場で戦うと思ったヨゾラだったが、この時間では近所迷惑になるとの事で、別の場所に来ていた。
「ここなら騒いでも誰も文句言わないだろ」
ジークがサキ達を連れてやって来たのは、既に廃坑となっていた洞窟の入り口だった。そこは、廃坑になるまで人の行き来が多かったのかそれなりに広く、戦うには十分な広さがあった。
「ここって珍しい鉱石が取れたっていう鉱山?」
「よく知ってるな。だが、今はもう枯れちまって人が寄り付かないからな。戦うには持って来いの場所だろ?」
「もしかして、ジークさんも戦いが好きな人?」
「必要ならするってだけだ。それに戦いってのはほとんどが人死にが出る。それはあまりいい気はしねーからな」
「ふーん」
「さて、始めるとするか」
ジークの声と共にヨゾラも右手の甲を出した。
「《風の暗殺者》」
「《極炎の龍人》」
二人を光の粒子が包み込み、その姿を変貌させていく。
「なんか昼の時と姿が違くない?」
「あまり人から離れた姿だと印象悪くなっちまうからな、普段は人間の姿でいるんだよ」
ジークの姿は頭から角が突き出し、背中からは強靭な翼が生え、尾てい骨辺りからは太い尻尾が伸びており、体中には鱗のようなものが所々付いていた。
「やっぱ、兄貴はその姿の方がかっこいいぜ」
「龍人型の武装って燃費悪いけど、その分飛行能力と武装の耐久性が優秀だから正直面倒なのよね」
外野の主にサキの声にヨゾラは冷や汗が流れたと錯覚するほど、不味い状況だと理解してしまったらしい。
「ま、すぐに終わるようなことじゃ留守番だな」
「えっと、手加減とかは?」
「本物の龍なら、そんなことしてくれないぜ」
その言葉と共にジークは大太刀を振り上げた。しかし、いくら長い大太刀とはいえそこからヨゾラへと届く程は長くなかった。
つまり、大太刀とは別の攻撃の構えだった。
「《
「《
ヨゾラが身を守るように自身を中心に竜巻を発生すると同時に、ジークが大太刀を地面に振り下ろされ、ヨゾラへ向けて大爆発を引き起こした。
「あっぶな」
ヨゾラはジークから瞬時に離れていたことと、いつもより風の勢いが強かったためか、奇跡的に無傷で済んだようだ。
「よく耐えたな」
「それほどでも!」
ヨゾラは投げナイフを胸部へ向けて投げて反撃するが、ジークに簡単に避けられてしまう。
「はっ、お前はそう戦うのか。黒い嬢ちゃんと違って分かりやすくていい」
すると、ジークは大太刀を左手で持ち直すと鱗だらけの右手を開いた状態でヨゾラに向けた。
「《
その手から球体状の能力がヨゾラの方へ高速で発射された。
「《
先程と同じように竜巻で防御しようとしたヨゾラだったが、嫌な予感がしたため上空へと風の力を使って大きく跳んで避けた。結果的にジークの放った爆弾はヨゾラが先程までいた場所で爆発し、上空にいたヨゾラにまで爆風が来るほど強力だった。
「《
追撃を警戒して空中で体勢を整えるが、予想した通りで次の爆弾攻撃がすでにジークの手から放たれようとしていた。
「《
投げられたナイフは風の力で高速で飛んでいき、ジークの右手にある爆弾に突き刺さる。そして、その爆弾がジークの手元で爆発した。
「新しい能力?」
ジークから離れた所に降り立ったヨゾラは、自身の新しい能力が適切なタイミングで使えたことに違和感を覚えたが、今は自爆した相手に集中する事にした。
「自爆しても無傷なのってやっぱり龍人型ってやつの影響なのかな?」
「正直にそうだと言うわけないだろ」
「龍人型の特徴よ。十神の第一能力が聞きづらくなるわ」
「それをふつーバラすか?」
「あら、これくらい教えてもいいじゃない」
「それはあのチビ自身に見破らせた方が勉強になんじゃねーの?」
「それもいいけど、その余裕があるほどジークは弱くないじゃない?」
「いや、あれ結構手を抜いてるぜ?」
「それこそ貴女が言っていいのかしら?」
「やっば、今の無し!」
外野が騒いでいる間、ジークは興が削がれてしまったようで大太刀を地面に突き刺し仁王立ちをしながら大きく溜め息を吐いた。その間もヨゾラは攻撃はしなかったがいつでも避けられるように、警戒を怠らなかった。
「はあ、この辺で終わりにしとくか」
「合格ってこと?」
「一応な。だが、出発したらクレイズに帰ってくるまで俺の指示に従うことが条件だ。いいな?」
「それはいいけど、試験としては不十分なんじゃない?」
「勝つための試験なら不十分だが、生き残るための試験だからな。それなら及第点だろ」
それだけ言うとジークは武装を解除して元の姿に戻ると、ヨゾラもそれに習って武装を解除した。
「帰るぞ。道に迷われても困るからな」
ジークがそう先導すると三人も後を追うように街への帰路へと着いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます