端話:太陽を繋ぐ鎖 前
まだ日が明けたばかりの頃。艶陽の都アデリアの端の方にある広い庭付きの一軒家で三人の少女が二体一で距離を取って向かい合っていた。
「本当に二対一で大丈夫ですの?」
金髪を二つに下げた少女が隣の少女と対面している少女に再度確認をした。
「もちろん、構わないぞ」
「だ、そうです。遠慮なく胸を借りましょう」
金髪の少女の対面にいる紫紺色をした短めの髪型の少女がそれに同意すると、金髪の少女の隣に立つ桃色の髪を一つに纏めた少女もそれに同意した。
そして、三人が右手を出し寵愛の証を光らせる。
「《鉄鎖の番犬》」
「《日射す舞姫》」
桃色髪の少女は軍服に似た服を着た犬の獣人姿に拳銃を持った武装になり、金髪の少女は白いドレス姿に細長い剣を持った武装になった。
「《紫紺の魔人》!」
そして紫髪の少女は、露出の多い服に蝙蝠の様な羽と細長い悪魔の様子な尻尾を持ち頭には角も生えていた。
「相変わらず、変な見た目ですね。クロエ先輩」
「お前も相変わらず可愛いらしい見た目をしているな。カタリナ」
「犬みたいで、ですよね?」
「そうだぞ」
「それはどうも」
カタリナが拳銃を素早くクロエへ向けて銃弾を一発だけ撃つ。
「《蝕むは小さき者》」
クロエは複数出した宙に浮く手くらいの大きさをした撒菱のような形の結晶体で防いだが、カタリナの能力によってすぐに消えてしまった。
その間に近づいていた金髪の少女がクロエ斬りつけるが、再び展開した結晶体によって防がれてしまう。
「ヴィオラ! 離れてください!」
「《
カタリナの声で咄嗟に離れるヴィオラ。そして、ヴィオラがいた場所とその右後ろの方へ雷が流れた。
ヴィオラがその先を見ると、いつの間にか結晶体を出していたようでそれと繋がるように雷が流れていたようだ。
「これは……避けるのがとても大変ですわね」
「大変で済むといいな、小娘!」
今度は大量の結晶体がヴィオラを囲うように展開され、ヴィオラはその射線に入らないように避けたためクロエから少しだけ離されてしまった。
「《
その様子を見たカタリナは瞬時に光のベールを展開し、ヴィオラごとクロエが出した結晶体を包み込み、それを受けた結晶体は地面に落ちて動かなくなってしまった。
「動いてなくても電気が繋がるので気をつけてください。後、盾を貼って溜めてください」
「わかりましたわ! 《
カタリナの言葉を受けたヴィオラは落ちた結晶体からすぐさま離れ、先程とは別の方向からクロエをカタリナと挟むように距離を取った。
「《
そして、自身の剣に力を溜め始めた。
ヴィオラの怪しい動きにクロエは結晶体を放ち止めようとするが、カタリナが銃で牽制しているためそちらに気を回さなくてはならず、ヴィオラの動きの制限ができなかった。
「《
「《
ヴィオラはクロエと反対側にいるカタリナに向けて巨大な光の剣を放とうと剣を振りかぶった。カタリナは巻き込まれないように、自分だけ入る光のベールを展開した。
「ふむ。悪くないな」
しかし、クロエは光の剣を空へ飛んで回避した。それを見越して撃たれた銃弾も結晶体によって防がれてしまった。
そして、クロエは手を銃のように見立てそれをヴィオラに向けた。
「《貫くは紫電の瞬き《シャルフ・フラグメント》》」
上空から放たれる高速で結晶体をヴィオラは半透明の盾で防ぐが、一発で盾が割れてしまった。そのことに少しだけ焦るヴィオラだったが、すぐに五枚ほど盾を貼りなおし追撃に放たれた三発の結晶体を防いだ。その間もカタリナはクロエに向かって銃弾を撃つが、クロエの速い動きと的確な結晶体の防御に銃弾を当てられずにいた。
そして、次に放たれた結晶体はヴィオラにも盾にも当たらず後ろの方へと外された。ヴィオラはそれの意味に気づいたが避けるのが遅かった。
「《
防いで落ちた結晶体と外された結晶体が雷が繋がり、ヴィオラの体を貫いた。
「これは思ったより威力が高いですわね」
そして、一発なら食らっても平気だと思っていたヴィオラだったが、その高威力の雷を受けた身体から大きく光が漏れ出し、武装が破壊されてしまった。
「ふはははは。我の雷を受けて平気だと思うなよ!」
ヴィオラは巻き込まれないようにすぐさまこの場から離れた。
「うるさいですよ。クロエ先輩」
高笑いをするクロエにカタリナは銃弾を放つが、さらに高度を上げて的が小さくなったクロエに銃弾が当たることはなかった。
「…………ぞ! ……を……………な!」
遠くなってクロエの声も聞こえづらくなっていた。しかし、結晶体だけは空から落としていた。
「ああー! 本当に面倒くさい能力ですね!」
イラつきながら結晶体から離れるカタリナだったが、地面に落ちる結晶体が多すぎてあまり逃げ場がなかった。
「《
そして、クロエの身体が紫色に光り雷を纏ったかと思うと、全ての結晶体へと雷が落ちた。
「《
しかし、カタリナが放った光のベールにより雷が全て掻き消されてしまった。
「あ゛っ゛、忘れておったああぁぁあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」
言葉の途中で寵愛能力量がなくなったらしく、武装が自壊し落ちて来るクロエ。そんな情け無い先輩の様子を見たカタリナは大きく溜め息を吐いて駆け出した。
「よっと」
カタリナは生身になったクロエを空中で抱きかかえ無事地面に下ろした。
「相変わらず、手のかかる先輩ですね」
「……カタリナよ、大いに感謝する」
半泣きのクロエだったが、ギリギリその偉そうな態度を崩なかった。
「漏らしながら言われても受け取りづらい感謝ですね」
カタリナの言葉にクロエは急いで自分の股を触った。しかし、そこは濡れてはいなかった。
「ソフィー! カタリナが我をいじめる!」
「ソフィー先輩はここにいませんよ」
「本当にこの方は皇妃候補なんでしょうか?」
いつの間にか近づいて来ていたヴィオラに指摘されたクロエは瞬時に態度を取り繕った
「いかにも! 我は霹靂の都であり首都でもあるランコードの皇妃候補、クロエ・ノルド・ランコードである!」
しかし、取り繕う前の態度を見たヴィオラはクロエに幻滅していた。
「ヴィオラには申し訳ないですが、皇妃候補はこんなのばかりですよ」
「そうらしいですわね。それより、食事の準備をしますので家に戻りますわ」
「カタリナー。我もお腹が空いたぞ」
「これでも本官の先輩なので用意してあげてください」
「元よりそのつもりですわ」
そうして、三人は朝食を食べるためにカタリナの家に戻った。
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