第20話:心の中は、見えないからね〜www




 商業ギルドの受付兼エントランスホールから、応接室へと移動した。

 置いてある調度品やソファなどのグレードが高いのは、気のせいでは無いと思う。

 とても香りの良いお茶を出され、皆して無言で一口。

 日本で飲んだ、お湯を注ぐと花開くお茶みたいな味と香りがした。


 責められる前に謝ろうとカップをソーサーに戻した瞬間、目の前の狸オヤジがテーブルに手を着いて頭を下げた。

「申し訳ございませんでした!」

 隣に座っている受付嬢も、慌てて頭を下げる。


 え、いや、すみません。

 むしろ俺が謝るべきだと思う。

「いん――――!」

 「いや、こちらこそ」と謝ろうとしたのに、アザトースに口を塞がれた。

「こっちまで謝ったら、50/50フィフティ・フィフティになるだろ、黙れ」

 この腹黒が!



「それで、メイドと料理人は確保できますかね?」

 狸……謝罪の意味を込めて、呼び名を変えよう。サブマスターだっけ?

 アザトースの質問に、彼の肩が揺れた。

「多分、無理です」

 ええ~と、話しにくいから、そろそろ顔を上げて欲しいな~と俺は思うんだけどなぁ。


 サブマスターからの結論は「責任は持てない」だった。

 給金が良いのでOKするメイドはいるだろうが、逃げ帰って来る可能性が高いと予想していた。

 それか、俺を籠絡して利用しようとするやからの可能性も。

 籠絡ってアレだよね?ハニートラップ、略してハニトラ。


 ハニトラしてくるようなのの大元は、ギルドでもちょっと敵対するのは辛い相手だろうから、自衛してね!と言われてしまった。

 そこまで言われたら、メイドは諦めてもらいたい。


「奴隷を買う!それなら逃げられないし、ハニトラも無い!」

 どれだけ必死なんだ、アザトース!!

 ボールスは、男性に限定して、商業ギルドに依頼を出していた。

 料理人はメイドに比べて屋敷内を歩く事は無いし、シロとラッキーに出会う確率も低い。

 元冒険者という変わった経歴の人も居なくは無いので、多分紹介できるだろうとサブマスターは言っていた。



 そしてその日の夕方には、商業ギルドに紹介されたと二人の料理人が屋敷に訪ねて来た。

「二人も雇えないのだが」

 困惑するボールスに、目をキラキラさせた二人の料理人はをする。

「給金は、二人で一人分で構いません。屋敷に住まわせてくだされば!」

 ボールスは悩んでるみたいだな。


 元々屋敷に住み込みで働いてもらうつもりだったので、それは俺も構わない。

 しかし条件が信用出来ないのだろう。

 俺は、二人の頭の上の三角が青だから、敵意も害意も無いのは解っているが、説明できないしなぁ。


「その代わり!休憩時間にハティとスコルと遊びたいです!!」

「ギルドで見た姿が格好良過ぎて!」

「でも可愛さもあって」

「触ったら気持ちよさそうなフワフワの毛とか」

「食事さえ3食貰えるなら、最低賃金でもかまいません!!」


 これ以上無い位の熱意を感じたらしいボールスは、二人の料理人を生温かい目で見た。

 リアルで初めて見たよ!生温かい目。

「単なるモンスターフェチだったか」

 ボールスが呟く。

 面接には参加しないがずっと見学していた俺とアザトースも、コクコクと頷いた。



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