第19話:責任の所在(真面目な話では無いw)




 いきなり出て来るなり失礼な物言いをした、商業ギルドのサブマスターとか言う狸オヤジ。

 俺はガイアと共に〈テンプレだな!〉『だよね!』と内心ニヤニヤしていたのだが、隣の二人は違ったらしい。


「いきなり人を馬鹿呼ばわりか!」

 ボールスが立ち上がった。その手は、剣のつかを掴んでいる。

「私もこれ程の侮辱を受けたのは初めてですね」

 アザトースは座ったままで、杖を地面に垂直に下ろし、ゴンッと大きな音をさせた。

 ん?杖なんて持ってたっけ?


 あ~あ、狸オヤジは顔面蒼白だ。

 だってボールスは近衛騎士の隊服だし、アザトースは王宮の魔術師のローブを着ている。

 だからこそ受付嬢は、責任者を呼びに行ったのだろう。

 あの様子なら「私、馬鹿にされました~」とは報告していないと思われる。多分素直に「スコルとハティが屋敷にいると言う、メイドを雇いたい人がいる」というところだろうか。


 ん?改めて考えると冗談のように聞こえるか。

 でも、でもね。信頼が大事な接客業でいきなり馬鹿呼ばわりは無いわ~。


 デパートの中で、ヨレヨレのオッチャンが10万越えの指輪を「結婚記念日だから、母ちゃんにプレゼントだ!」と買っているのを見た事もある。人は見かけが全てでは無いのだ。

 ドレスコードのある店に、それを無視して行ったのなら客が悪いが、そうでなければ頭ごなしの否定はアウトだよな。



 何てちょっと色々思い出してたら、いつの間にか皆に注目されてたわ。

 これはあれか?シロとラッキーをべば良いのかな?

 その話だったもんね?

『シロ~ラッキー、今俺が居る所に来れる?出来れば床からゆっくり出て来て欲しい』

<わかった!行くね!>

<床からゆっくりなのね?今行くわ>

 うんうん。床からゆっくり出て来れば、巻き込まれる人も居ないだろう。

 上から入って来たら、プチッとなる人がいるかもしれないからな!

 俺はちゃんと気遣いの出来る大人よ。


〈ヨッシー!良い事を教えてやろう!皆の要求は、二匹を喚ぶんじゃなくて、場所移動だ!〉

 ガイアに言われた。

 え?マジすか。俺、やっちゃった?

〈確実にやってしまいましたね〉

 アートモが傷口に塩と言うか、追いダメージをくれた。



 俺の足元から黒い鼻先が出て来て、俺を背中に乗せてズズズーっと出て来たのは、ラッキーだ。

 その横から、やはり鼻先から出て来たのはシロ。

 商業ギルドの建物が天井が高い大きな造りで良かった。

 日本の一軒家だったら、俺はラッキーと天井に確実に挟まれていた。


<来たよ!ヨシツグ!>

<まぁ、何でしょう。注目されてますね>

 お座り状態なのに3メートル越えだからなぁ。

 俺が逆の立場でも見るよ。100%見るよ!

 しかも俺の事、背中に乗せちゃってるしな!

 そして俺に注目する視線の中に、同居人の二人の視線もある。

 冷たい!零下だよ!氷点下だよ!!


 えぇ~と、あ、謝った方が良いのかな?

 今回は全面的に俺が悪いし!

「とりあえず、シロとラッキーはありがとうな。また屋敷で待ってて!お土産買って帰るから!」

<もう?まぁ良いや!美味しいオヤツ買って来てね!>

<わかりました。フフ、こちらでは何でも食べられますから、ぜひ甘いものをお願いします>

 二匹は俺にオヤツをおねだりして帰って行った。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る