第21話:厨房は戦場だ(嘘)
「え?俺達が作りますよ!?」
昼食を作ろうと厨房に行った俺に、料理人二人は驚いた声をあげる。
まぁ普通はそうだよな。
でも俺の感覚としてはルームシェアであって、食費などは別だ。
今日の朝食と昼の材料は甘えさせてもらうが、夕食分からは自分で用意するつもりだ。
その為に冷蔵庫(魔石製)は、俺用を別で購入したのだ。
届くのは今日の昼過ぎだけど。
アザトースとボールス、使用人用の食材は、先生が手配してくれた業務用冷蔵庫(魔石製)を使ってもらうつもりだからな。
勤勉な二人は、今日の朝早くから朝市へ出掛けて材料を買って来たらしい。
そして屋敷に定期的に配達する契約まで済ませてきたのだ。
朝起きると、既に朝食が出来ていた。
シロとラッキーの分として、大量の生肉まであった。
塩胡椒を軽く振って、レアのステーキにしてもらった。
「でも俺、昼は
日本ではただの犬だった二匹は、人間の食べ物が食べられなかった。
高校生だった当時の俺が、唯一自分で作って食べていた炒飯が凄く美味しそうに見えてたらしいのだ。
ウインナーと長ネギと卵の、おそろしくシンプルな炒飯なのにな。
「ちゃーはんって何ですか?」
頭悪そうな発音なのは、この世界に無い食べ物だからか?
「肉と野菜と卵とご飯を炒めて、塩胡椒で味付けする料理だよ」
本当は香り付けで醤油も入れたいけど、無いからなぁ。
〈ありますよ、醤油。名前が違いますけど〉
〈そこにあるじゃん、ソイソース〉
え?何でソイソース?普通に醤油で良くない?
またガイアの悪戯?
〈いや、だってここでの名前がソイソースだから。さすがにそれくらいは訳さなくても
知ってたけど、ソイソースが醤油だって知ってたけども!
「焼き飯の事っぽいけど、違うのかな」
見事な金髪を後ろで束ねている方の料理人が呟いた。
多分、それで良いと思う。
「えぇと、見学しても良いですか?それと、スープはもう人数分作ってしまったので、お嫌でなければ食べてください」
もう一人の料理人が言う。
彼は角刈りに近い短髪で、色は茶色だ。
長髪のが少し砕けてて、角刈りはキッチリした性格なのかな。
スープを見せてもらうと、香りはコンソメスープだった。
有り難く分けてもらう事にする。
シロとラッキーの分もあるらしく、どおりで人数の割にデカイ鍋だと思ったよ。
基本的に一人前しか作った事のない俺。
ウインナーを刻み、長ネギを刻み、卵を溶いて、ご飯を用意。
ご飯は炊いてあったのを貰った。
勿論、自分で炊くつもりだったよ?
でも俺の分もあるって言うからさ。
〈でも炊飯器で炊くつもりだっただろ?〉
……無いよね、炊飯器。
〈土鍋で美味しく炊く方法をお教えしますよ〉
初めチョロチョロ中パッパ、赤子が泣いても蓋取るな、でしょ?
〈そうですが、意味はお解りで?〉
すみません。
知ったかぶりしました。
さぁ!炒めます!
油を熱してウインナーを入れて、軽く火が通ったら長ネギ入れて。
長ネギがシンナリしたら、軽く塩胡椒。
卵を入れて、ご飯を入れたら火を強く……どうやるの!?
「ゴメン、ちょっと火を強くしたいんだけど」
「あ、はいはい」
長髪の人が調整してくれた。
もう1回塩胡椒。今度は普通に。
そしてひたすら混ぜる混ぜる混ぜる。
最後に醤油を回し入れ、軽く混ぜたら完成!
慣れない場所で作った割には、良い出来じゃないかな。
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