第10話:嘘じゃないから!本当だからね!




 俺の無駄に優秀な言語翻訳機能は、白金貨5枚の仕事をしてくれた。

 白金貨1枚が大体1,000万円だとガイアが言っていた。

 まだ全部は終わってないのだが、生活に必要だろうと先払いしてくれたのだ。

 郊外に広めの家が買えるな!



 この国の通貨単位は、銅貨・銀貨・金貨なのだが、その中で更に細かく分かれている。

 小銅貨、大銅貨、小銀貨、大銀貨、小金貨、大金貨、白金貨。


 しかしガイアが良い仕事をしてしまっているので、俺には全て円換算で見えるのだ。

 白金貨の表面に1,000万とか日本語で書かれてる違和感。

 小銅貨10大銅貨100小銀貨1,000大銀貨1万小金貨10万大金貨100万白金貨1,000万

 円換算が見えない物は、贋金にせがねなので受け取るなと言われた。

 ガイアが優秀過ぎる件。

 いや、真贋しんがんはアートモか?




 さて、肝心のお仕事といきましょうか!

 原文を書き写しながら、ゆっくりと読み上げる。

「えぇと、『イグスリのザイリョウは、セリ、ナズナ、ゴギョウ、ハコベラ、ホトケノザ、スズナ、スズシロ』」

 え?これって七草!七草粥の七草だよね!?

 大丈夫?5,000万の内容これ!?


「体に良い薬草ばかりですが、スズナとスズシロが解らないですね」

 ファランさん。真面目に仕事しているのに、間抜けに見える悲しさよ。

 だって、検証しているのが七草粥の七草。

「スズナがカブでスズシロが大根だと」

 七草粥。正月料理で疲れた胃を休ませるんだよな、確か。だから胃薬?


 調薬だから、実際には七草粥ではない。

 当たり前か。

 製法も『葉を乾燥させ乳鉢ですり潰し、水から煮出す』とあるからね。

 そして、この『煮出す』は、言葉通りではなく、調薬スキルのある人が魔力を込めながら攪拌かくはんする事を指している。

 ファランさんが教えてくれたので、間違いない。



「師匠!持って来たよ!」

 ワカティさんが前半の5個の薬草を籠に持って来た。

「え?蕪と大根!?」

 スズナとスズシロの話を聞いたんだろうなぁ。

 あ!でも料理に使うような大きいのを買ってこられると困っちゃうぞ。


「まだ小さいサイズので大丈夫だと思います」

 横から助言すると、は?みたいな顔をされた。

「調薬なんだから、それ用のを持って来るに決まってるし。ほら」

 先に持って来た5種類のを見せられた。

 乾燥されていて、薬草っぽくなっていた。


 うぅん。

 小さな親切、大きなお世話だったね!


 この後、ワカティさんはファランさんに「人に物を教えてもらっておいて、なんて態度ですか!」と怒られてしまった。

 なんかゴメンね。



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