第2話:全ては終わっていた




「召喚したのは500年前!?」

 応接室で、出された茶を飲みながら話を聞いた。

 俺を召喚したのは、今は無きナイトオフル王国という国らしい。


「私も文献でしか知らないのですが、王制を強いていたクソみたいな国だったようで、勇者召喚が出来なくて魔物モンスターに滅ぼされたらしいです。勇者を召喚しては、奴隷のようにコキ使ってたらしいですから、失敗して良かったですね!いや、ばれてから500年経ってるけど、一応成功なのかな」


 凄く軽いノリで状況説明をしてくれているのは、この国の王様だった。

 王国じゃなくて帝国らしいから、帝王様なのか?皇帝?

 まぁ、とにかく一番偉い人だな。


「ずっと光り続けている魔法陣が地下にあって、何が起こるか分からないから、城が壊れても地下だけは保存されてたのです」

 あの黒魔導士が追加説明してくれた。

「召喚した記録はあったからね。埋めなくて良かった!」

 王様!本当にな!!

 もし地下室が埋められてたら、俺は異世界に着いた瞬間に生き埋め窒息死亡ルートだったよ。


「ありがとうございます?」

 とりあえず死亡ルート回避のお礼は言っておこう。

 疑問形なのは、ご愛嬌。



 ナイトオフル王国は、そもそもの国力も落ちていて、俺の召喚も無理矢理決行したようで、必要魔力が足りなかったのだろうと予想された。

「それで、もう召喚した国も無いし、今は魔王とかも居ないし、君はどうしたい?」

 王様に聞かれた。

 どうしたいって言われても、帰りたい……かな。


「えぇと、帰れますかね」

 テンプレだと帰れないんだよね。

「今は無理かな。ゴメンね」

 軽っ!王様、軽っ!!

 多分同年代の王様は、現代?地球?日本?にいたら、チャラ男だと思うノリだ。

 まぁ予想通りだし、こっちで生きていく……ん?


「10年位魔力を溜めれば、多分出来ると思うんだよね。ゴメンね~。この前、ちょっと大嵐があって、蓄積しといた魔力を使ったばかりなんだよ」

「使わなければ、国どころか街も守れなかったですので、英断でした」

 黒魔導士が言うのを、王様は「でもね~」と、俺に申し訳なさそうな顔を向けた。



「ええと、それでは、俺が異世界ここで生きていける知識と、当面の衣食住の保証をお願いします」

 正直、両親とはほぼ絶縁状態だったし、妻どころか恋人も居ない。仕事に未練もないし、仲の良い友人はそれなりに居たが、リスクを負ってまで会いたいかと言うと、そこまででも無い。

 しかも、喚ばれるのに500年掛かっているのなら、帰ったら浦島太郎状態の可能性も有る。


 俺は、異世界で生きていく覚悟を決めた。



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