第2話 天敵現る、対策必須

「デビルバスターオンライン2」を購入してからしばらく、俺は乱立する初心者部屋に突入してはプレイヤーを狩りまくる作業に勤しんでいた。

 

 その甲斐あってか、俺の装備スキルもようやくプレイヤーキルに適したものになってきた。


 俺は自身のステータスと全スキルをシステムボイスに読み上げさせる。


「【BUSTER】:バスターランク3」


「現在装備武器【火ゴブリンの猟弩】」


「防具【フレイムゴブリンヘッド】【フレイムオーガハンド】【フレイムゴブリンボディ】【爆弾師の腰当】【爆弾師の草鞋】


「攻撃力110、防御力25」


「発動スキル【裏切者(非表示)】【爆弾威力強化】【爆弾設置高速化】【爆弾耐性強化】」



 そう、俺は防御を犠牲に爆弾系スキルに特化した装備を作った。このランクの平均防御力は80らしいので、かなり低めだ。


 とは言っても爆弾耐性があるために、自身の爆弾による被ダメージはかなり抑えられる。


 ちなみに、【BUSTER】と言うのは俺のプレイヤーネームだ。このゲームのデフォルトネームで、自分で名付けたわけではない。


 デフォルトネームはプレイヤー特定がされづらいのが特徴で、プレイヤーキルとは相性がいい。


 ランク3というのはまだ初心者ランクだ。


 中級者部屋以上に入るにはランクを4にあげる必要がある。


 ランクが10になれば上級者部屋に、ランクが50以上になれば熟練者部屋に入れるようになる。


 それ以降は青天井だ。


 ちなみに6年やりこんだ俺の前作ランクは2500くらいだったはずで、最高ランカーは3200くらいだったのでそれなりに高ランカーだった。



 「デビルバスターオンライン2」は出だしがちょっと遅れたのと、正規クリアができないのもあってランク的には相当出遅れてる。


 最高ランカーは既に100を超えたそうだ。



「さて、上級者認定クエストでも行くか」



 ランク4に上がるためには経験値を満たすだけではダメで、特殊なクエストをクリアする必要がある。


 ちなみに、俺はクエスト失敗すればそのクエストはクリア表示になるので、ランク4以上は絶対上がれないみたいなことはなさそうだ。


 しかし、実は最近気付いたのだが、自殺によるダウンが含まれた場合はそのクエストは失敗してもクリア扱いにならず、報酬も経験値も貰えないようなのだ。


 あくまで自分以外のプレイヤーをキルさせようという運営の姿勢に、俺はさすがとしか言えない。




 俺はいつも通り集会場に行くが、今回は自分の認定クエストを貼るために自分が部屋主となる。


 む、なかなか高ランクの奴が入ってきやがった。


 俺はキック機能でそいつを蹴り出す。


 今のランクではキルし辛い奴に、自分の部屋に入ってこられると困る。


 支援者気取りの偽善者には正義あくの鉄槌を、だ。



 認定クエストの標的であるブラックオーガキングの素材から作る武器がそれなりに強いらしく、ランク4に上がりたての雑魚装備プレイヤーカモが続々と部屋に入ってきた。



「協力ありがとう、頑張りましょう!」



 俺はとりあえず挨拶する。他のプレイヤーがそれぞれ挨拶を口にすると、出発準備が整ったという表示になる。



――しかし、俺はこのとき決定的なミスを犯していた。彼らのランクと防御力を確認することに気を取られ、スキル欄をチェックし忘れていたのだ……。




 ブラックオーガキングの出現ステージである古代闘技場跡地へ飛ばされた。



「新しい敵だよな、こいつ。自分が死なないよう気を付けるか」



 ブラックオーガキングは、言ってしまえばただのデカくて黒い鬼だが、ヤツの攻撃を食らうと一定時間防御力が下がってしまう。これはプレイヤーキルしやすいクエストだ。



 ブラックオーガキングは雄たけびとともに不気味に薄暗い闘技場内へと降ってきた。なんつう登場の仕方だ。



 他のプレイヤーは既に戦い方が分かってるのか、動きがスムーズだ。



「とりあえずはまずは様子見の散弾祭りだな」



 俺は一番防御が低い【悪魔狩り君】とネーム表示されているプレイヤーに向かって散弾を連射しまくる。狩られるのは悪魔じゃなくててめえの方だ!



「ちょ、やめてください! ああ! 死ぬ!」



 悪魔狩り君はオーガの攻撃を食らって瀕死寸前。あとは爆弾で処理するか。



 そう思ったとき。



「【NEX】の【回復効果共有】により、HPが回復しました」



 む、クソうざい効果が発動したな。どうやらNEXというプレイヤーのスキルにより、彼の使った回復アイテムの効果が他プレイヤーにも行き渡ったようだ。



「小癪な、それならあいつから殺せばいいだけだ」



 と思うが、NEXは大楯の装備できる重片手剣装備をしている。一度爆弾を置いたが、ガードされてしまった。



「おいおい、爆弾を味方の傍に置くと危ないだろ。敵が拘束されている状態の時にしてくれよ」



 ちっ、こいつはなかなか厳しい。



 俺はその後も執拗に悪魔狩り君ともう一人の紙耐久プレイヤーであるポンキチとかいうふざけた名前のやつを爆殺しようと試みたが、どうしても一発では殺しきれずNEXのスキルで回復されてしまった。



 そしてとうとう……。



「ブラックオーガキングの討伐に成功しました! クエストクリア!」




 もちろん、俺にとってはクエスト失敗だ。俺は報酬もなにも貰えず集会場に帰還する羽目になった。


 さらに、集会場でNEXにたしなめられてしまった。



「お前、そういう迷惑行為やめろよ。つまんねえから。今回は討伐できたからいいけど、次クエスト行くときお前いたら即離脱すっからな」



 くそ、別にこっちは迷惑行為がしたくてやってるんじゃねえ……と思ったが、よく考えたら迷惑行為をするためにこのアカウントを続けてるんだった。


 まあいい、こんな迷惑なスキル持ってるやつなんかこっちから願い下げだ。



 それにしても、こういったスキル持ちの対策も次回から考えとかないといけないな……。





 俺は初めての屈辱的敗北を味わうのだった。



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