第2話 ドM悪魔とメフィスト

 なんじゃ、またお前か? 今日は何の用じゃ。お見合いの第2回目じゃと? 何で2回目があるのじゃ?

 アンケートにもう一度会いたいと書かれていたじゃと。アンケートなぞあったかの? ああ、そう言えば母上が代わりに書いておくからと言っておったな。

 

 すまんの、わらわには、無理じゃからと書かせてもらえんかったのじゃ。以前に同じようなことがあっての、その時来た男がいけすかないヤツじゃったんじゃ。そうじゃ、他国の王子じゃったな。お前の国の未来を考えたら俺の物になるのが最善の選択だろ、などと言いよっての。どんだけ俺様キャラなんじゃという話じゃった。


 頭にきたからそのアンケートというやつに、二度と会いたくない、ナルシスト、最悪。と書いて出してやったのじゃ。そしたら母上から、この国を滅ぼす気ですか? リリス。とこっぴどく怒られてな。それで今回は書かせてもらえんかったんじゃろう。


 なるほど、それでお前はまたここに来たというわけじゃな。すまんな、わらわはまだお見合いという儀式のことがよくわからんでな。でなんじゃったか? 要は理想の相手を見つけるということじゃったかの?

ちょっと違うけどそれでいい、じゃと? まあ、まずはお前の理想の相手じゃな。あれからもう一度考えてみたのじゃが、悪魔軍団長のベルゼブブはお前とはうまくいかんじゃろうな。あやつは自分の頭を踏みつけてくれる強い男が好きらしいからの、お前のような細身の優男やさおとこでは満足せんじゃろ。


 何じゃ、ほうけた様な顔をしおって? ベルゼブブのことが気に入っておったのか? 残念じゃがやめておけ。男はベルゼブブだけじゃなかろう。実はな、もう1人候補がいるのじゃ。メフィストを知っておるか? そうじゃ、悪魔国務大臣のメフィストじゃ。あの男はよい。我が国の財政が苦しいのはお前もよく知っておろう。メフィストは国の収入を増やす画期的な方法を考え出したのじゃ。


 どんな方法か知っておるか? なんじゃ知らんのか? SNSの開発じゃ。さすがにSNSは知っておろう? そーじや、そーしゃるねっとわーきんぐさーびす、じゃ。悪魔専用のSNSを国で開発して、悪魔の国々で使ってもらい広告収入を得るという、びじねすもでる、じゃと言っておった。


 聞いて驚くでないぞ、そのSNSを使うためにアプリをスマホにダウンロードするのじゃが、これがなんと無料なんじゃ! よいか無料じゃぞ。それじゃったら誰でもダウンロードしまくりではないか。


 なんじゃ、またおかしな顔をしおって。 ん、ありきたりじゃと? 負け惜しみを言うでないわ。画期的すぎて嫉妬しておるのか? 小さい男じゃの。


 アプリの名前? なんじゃったかの? あそうそう、「デビチャット」じゃった。デビル+チャットと言う意味じゃな。え?やめた方がいいじゃと? なら「おしゃべりデーモン」はどうじゃ? 考えたやつ頭悪そうですね、じゃないわ! これはわらわが考えたんじゃ。バカにしおって。

 

 ともかくメフィストに褒美を取らせることにして呼び出したのじゃ。ああそのパターンね、じゃと? わかったような顔しおって。まあよい、話を続けるぞ。何でも欲しいものを言えと、わらわは言ったのじゃ。あやつはなんと言ったと思う? 地位とか名誉じゃと? ブー、ハズレじゃー。月並みな答えじゃの相変わらず。そんなことじゃから相手が見つからんのじゃ。フハハハハ。


 聞いて驚くなよ、あやつはな「デビチャット」にわらわのプライベート動画を投稿するから撮影させて欲しいと言ったのじゃ。逆に驚きました、とな? 逆とは何じゃ。ただしじゃ、あやつなりの設定があるとかで、まずは、そのほとんど体を隠していない布切れを脱いでこれを着てくれと言われてな。その時の写真がこれじゃ。


 ゴスロリワンピースというらしいんじゃ。コルセットでウエストがぎゅうぎゅう締め付けられて苦しかったの。ツインテール? そうじゃメフィストが髪型はこれにせいと言うんでな。それから、衣装と髪型はこれでいいので、「ヤンデレ王女」を演じてくださいと言われてじゃな。「ヤンデレ」とは何なんじゃ?どうすればいいんじゃ?と文句を言ったのじゃ。


「ヤンデレ」は「ヤンデレ」です。とにかくやってみてくださいの一点張りじゃ。仕方ないのでメフィストの書いた台本通りにやってみたのじゃ。結果はダメじゃった。メフィストに、これでは「いいね」がもらえませんよ。がっかりですなどと言われての。正直へこんだのじゃ。


 仕方ないのでな、夜のマッサージの時にメイドのトレーネに演技指導をしてもらったのじゃ。トレーネはじゃあ「ヤンデレ女子マッサージ」をしてあげますと言ってくれてな。わらわはうれしくて、おう頼むぞと言ったのじゃ。そしたらじゃ、トレーネは突然、はーーっとため息をついてな。「マッサージだるーっ」と言ったのじゃ。


 まずは、肩と首なんじゃが、「ねえ王女? 気持ちいいですか?」と聞いてくるんで、「おお、気持ちいいぞ」と答えるとじゃな、「気持ちいいふりですか? 本当はぜんぜん凝ってないんでしょ」とかいうんじゃ。「いやいや、本当じゃトレーネはマッサージうまいのう」と言うと、「はいでたー、社交辞令おつ」と言い返す始末じゃ。


「私の方なんて見たくないでしょうけど、こっち向いてもらえます」と言うんで仰向けになって、顔と首筋のマッサージじゃ。「あーこの顔、別の男のこと考えてる顔だー」とか言い出すんでな「そんなんことないぞ」と慌てて言ったのじゃ。「じゃあ、私のこと考えてます? 私のことだけ24時間365日考えてます?」

と言われての。ちょっとめんどくさくなってきたのじゃ。


「あーこれね。このふたつのふくらみ。自慢でしょうね。これだけ立派ですもの。さぞ鼻高々でしょう。どうやったらこんなに大きくなるのか教えてくださります? はい、ごめんなさい。貧相で。あーにくたらしい。めざわりったらありゃしない。」と言いながら、ぐいぐい渾身の力でもんでくるじゃ。わらわは、いたたたた、強いやめてくれ。と声をあげてしもうた。


 わらわはもう限界じゃった。さっきから一体何なのじゃ。わらわのことが嫌いになったのか?と感情的になって言ってしもうた。そしたらトレーネのやつ「あら、ヤンデレマッサージをお望みになったのはリリス王女様ですよ」としれっと言いおった。ああ、これがヤンデレというやつか?付き合いきれんのこれはと思ったの。お前もそう思うじゃろ? なにツンデレの方が良いとな? 何じゃツンデレとは? またトレーネに教えてもらわんといかんな。


 何じゃ? マッサージの続き? ああ、トレーネが「ちょっと意地悪でしたね」と言ってから今度は優しくやってくれたぞ。いつものようにタオルを剥ぎ取ってだな、今日は優しくしてあげますと言って、さっきぐいぐいもんだ場所の先端を羽根で触るようにソフトに触れてくるんじゃ。


 やっぱり頭が真っ白になってしもうてな、「トレーネだけじゃ、トレーネのことだけ考えてましゅからやめんでくりゃ」と言ってしもうた。おお、もう時間じゃな。また、わらわばかりしゃべってしもうたの。また来るがよい。今度はお前の話を聞かせるのじゃぞ。

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