ドM悪魔とお見合いしたら勘違いされて話がまったく進みません!

おあしす

第1話 ドM悪魔とベルゼブブ

 まあ座わるがよい。なんだ緊張しておるのか? 顔色が悪いぞ。今日はこの悪魔王女リリス様が、じきじきにお前の話を聴いてやると言っておるのじゃ。なんじゃと? 顔が怖いじゃと?

 

 どこが怖いというのじゃ? 赤い瞳じゃと? ああ、これは寝不足でな。目が充血してしまったのじゃ。夜遅くまで小説を読んでいてな、あまりに面白いものだから寝るのが遅くなってしまったのじゃ。


 どんな小説かじゃと? なんでおまえにそこまで教える必要があるのじゃ? まあその—いわゆる恋愛ものじゃ。屈強な悪魔騎士と勇者のな。なんじゃBとLとは? そう呼ばれておる? 最強の男たちが互いを認めあい高めあうそう言う物語じゃぞ。お前も読んだことがあるであろう? ない? ふっ、教養のないやつめ。それで? お前は何しにここへ来た? 何が目的なのじゃ?


 ふん! お見合いだと。オミアイとはなんじゃ? ふんふん、若い男女がお互いの相手を見つけるために会って話をする会じゃと? お前は相手を求めておるのか? ならよい男がおるぞ。悪魔軍団長のベルゼブブじゃ。あの男はよい。


 先月の天使との闘いでだな、ひとりで何十人もの天使を倒したのじゃ。しかも素手でじゃぞ。あやつの放つ蹴りは天使どもが立てこもる城塞の壁を粉々に砕いたのじゃ。そのあと少し足を引きずっておったがの。当たり前じゃ、足であんな固い城壁を蹴ったのじゃ、普通なら足が折れておるぞ。


 普通はそんなことしない? あやつに常識は通用せんぞ。それでわらわは、あやつに褒美をつかわすと言ったのじゃ。なんでも欲しいものを言えとな。そしたらあいつなんと言ったと思う。金か領土ですか?だと?、月並みな答えじゃ、つまらんのー、わからんか? まあ無理はないの。なにしろ、あやつには常識が通用せんのじゃから。


 二回言った? 大事な話じゃから二回言ったのじゃ、それくらいわかるであろう? ああそうじゃった、なにを要求したのかと言う話じゃったな。あいつはな事もあろうに、リリス王女様のおみ足で頭を踏みつけて下さい、と言ったのじゃ。

 

 そんなことで何がうれしいんじゃ、おまえは? とわらわは言ったのじゃが、どうしてもって言うんでな、素足でふんでやったわ。グリグリとな! さすがにわらわも飽きてきたんでな、もういいじゃろ、とやめようとしたんじゃ。そしたらベルゼブブのやつ、わらわの足にすがり付いて、もっともっとお願いします、と言いおった。


 なんじゃ女王さまとは? わらわは王女じゃぞ。女王は母上じゃ。母上に踏んでもらいたいのか?と聞くと、あ、いえ――思わず言ってしまいました。などと訳のわからんことを言いよった。わらわはうんざりしてな、ならもうよいな、と今度こそやめようとしたのじゃ。そしたらベルゼブブのやつ図々しくも、もうひとつやってもらいたいことがあるのです。と言うではないか。なんと言ったと思う?

 

 ん? むちを使う? 驚いた! なんでわかったのじゃ? さてはこの話をだれぞから聞いたのじゃな。聞いてない? 聞かずにわかると申すか? なんか気味が悪いのー。まあよい、とにかくお前の言う通り、どこからか取り出したむちで自分を打てと言い出しおった。


 このむちは家畜を打つものであって、お前のような英雄を打つものではないのだぞ。わかっておるのか? と言ったのじゃが、わかっています、ですが今は家畜ブタとお呼び下さい、とますます訳の分からぬことを言う始末じゃ。


 それからどうしたかって? わらわは、慈悲ぶかいからの、望み通りむちで打ってやったわ! このブタめ! と言いながらな。 あ、これはベルゼブブがこう言いながら打てと言うのでな、サービスと言うやつじゃ。


 話がそれてしまったようじゃ。なんの話をしておったかの? お見合い? そうそのオミアイの話であった。相手を見つけるための儀式じゃったの。お前の相手を見つければ良いのか?そうじゃない? わらわのことをもっと知りたい? わらわの何を知りたいのじゃ?


 最近ハマっていることじゃと? そうじゃな、マッサージにハマっておるぞ。もちろんしてもらう方じゃ。あたりあえじゃろ。メイドのトレーネがとても上手なのじゃ。最近は毎晩寝る前にやってもらっておる。


 どんな風にうまいのかじゃと? うんそうじゃなあ、まずは背中じゃ。わらわは肩と背中がこるでの、うつ伏せになって指で押してもらうんじゃ、トレーネがリリス様とてもこっていらっしゃいます、と言いながら 優しく指で押してくれるのじゃ、次は肩じゃ、ちょうど良い強さでとても気持ち良いのじゃ。


 思ったより普通じゃと? 普通で何が悪いのじゃ、気持ちよければそれで良かろう。次にトレーネが仰向けになってくださいと言うんで、仰向けになるんじゃ。顔のマッサージなんじゃが、こめかみや頬を押してくれるのでこれはこれですごく気持ちいいんじゃ。


 トレーネがリリス様とてもお美しいです、などと言ってくれるのでつい嬉しくなっての。だがな、そこから急にトレーネの機嫌が悪くなるのじゃ。首筋のマッサージをしていると思ったらな、何ですか! このふしだらな膨らみは? などと言い出してな、わらわのタオルで隠している胸の部分を激しく押してくるんじゃ。つ、強いやめてくれ、と言ってもやめてくれん。これでうす汚い男どもを誘惑してるんでしょう? 許しません! などとわけのわからぬことを言ってな。


 だいたいうす汚い男どもとは誰のことじゃ。誘惑とは何のことなんじゃ。何じゃ? 何をじっと見ておる。何かわらわの体についておるのか? とんでもない凶器をお持ちですね、じゃと? わらわは何も持っておらんぞ、普段から武器なぞ持っておったら危ないであろう。


 まあよい、トレーネのやつ、その後必ずわらわのタオルを剥ぎ取るのじゃ。そしてわらわの体をじっと見てな、どうしたらこんなけがらわしい体になるですか?ととんでもなく失礼なことを言い出すのじゃ。汚らわしいとはなんじゃ? さすがに失礼であろう、とトレーネにいったのじゃ。けどな、トレーネのやつ、まったくわらわを怖れる様子もなく言い返してくるのじゃ。


 リリス様のそのお身体、あの下劣な騎士団の兵士どもがなんと言っているかご存知なのですか? わたくしはそれが許せないのです。はい、口にするのもはばかられる下品なことを言っているのを、わたくしは聞いてしまったのです。などと言うのでな、いったいなんと言っているのだ、許す言ってみよ。とわらわは命じたのじゃ。


 トレーネはわらわの耳元に唇を寄せ『欲求不満まるだしボディ』と言ってますとささやくように言いよった。欲求不満じゃと? わらわが何を欲しているのか、あやつら騎士団にわかるのか? バカバカしい、とわらわは一笑にふしてやった。じゃがなトレーネは納得せんかった。


 ならそうではないと、わたくしに証明してくださいと言いだしてな。証明もなにも、わらわは十分充たされておるのじゃからそんな必要もなかろう。わらわがそう言うと、トレーネは、リリス王女さまの頭ではなく、体が満たされてないのです。わたくしが教えてさしあげますと言ってな、なぜかマッサージの続きを始めたのじゃ。


 この2つの膨らみのてっぺんにあるこの突起物、これがいけないのです。と言って押したり引っ張ったりとにかくしつこく刺激してくるのじゃ。最初はなんともなかったのじゃが、だんだん体の奥がじんじんとしびれるようになってきてな、頭がぼーっとしてきたのじゃ。なんじゃこれは? わらわは恐ろしくなってな、トレーネにもうよい、やめてくれといったのじゃ。トレーネはやめるどころか、リリス王女の嘘つき、体は反対のことを言ってますよとささやいてくる。


 そのときはもうなんも考えられんようになっておったわらわは、自分でも信じられんようなこびた声でトレーネに言ってしもうた。やめんでくれ、いや、やめないでくだしゃい。とな。


 おいお前、鼻から血がでておるぞ、ここに来る前にだれかに殴られたのか?違う?これではまるで、わらわが殴ったようではないか? それはご褒美じゃと? 相変わらずようわからんやつじゃ。おう、ちょうど時間が来たようじゃ。また来るがよい。今度はお前の話も聞かせるのじゃぞ。



 

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