迷惑は。

シヨゥ

第1話

「やっぱり人は誰かのためじゃないと生きられないんだよ」

 彼は言う。

「ひとりだと諦めがついてしまう。迷惑をかける相手がいるだけで諦めきれなくなるんだ」

「なるほど」

「僕は生きることを諦めたくない。だから迷惑をかけたくない君に妻になってほしい」

「……ムードがないな。君は」

 ため息が出る。

「でも、君らしすぎる告白だね。うん、気持ちいいぐらいに君らしい」

 幼馴染で腐れ縁。恥ずかしいとこも見飽きた仲。

「もう君を介護している映像がばっちり想像できるんだよね」

「それって」

「迷惑はかけあうもの。無理はしないって誓えるかい?」

「もちろん」

「ならいいよ。末永くよろしく」

 握手を交わす。いつの頃か想像していた未来がついにやってきた。そんな感じがする。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

迷惑は。 シヨゥ @Shiyoxu

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る