呪いのラジオ

リスナー①

『それでは、ラジオネーム《マジっぴ》さんのリクザザッ…トでkan…のハッピーエアザザ…ザザザ…』


「何だよ、急に雑音が入るなよなー」

 一人ごちて、ラジオのチューニングを合わす。

 会社帰りにラジオを聴きながら車を運転するのが俺の日課で、いつもの習慣を崩されるのは、疲れてる時には特に神経に障るものだ。

 特に電波が届き難い場所でもないのに。何処かで無線でもやってるのかと思った。


『最近売れに売れてますね~kannaは。新曲のハッピーエアロビもオリコン初登場三位ですから。これは……』

 なんだよ。終わってしまったじゃないか! 今日は本当についてない日だった。

 仕事では些細なミスで上司にネチネチ言われ、残業を押し付けられて彼女とのデートもパアだ。

 本当だったら、彼女と今頃はライブへ行ってた筈なのに


『……ザザッ…ザ…オマエ……ハア…ト…ザザザ…サン…ジュッ…プン』


「またかよ! 一体どうなっているんだ? 変な声まで?」

 良く聴いてみたら、ラジオの雑音とは別に誰かの声が入っている。

 何を言ってるのか聴くためにラジオのボリュームを上げてみた。


『ザザザ……オマ…エハ…アト…ザザッ…ニジュ…ュ…ウザザザ…ニ…フン』


 一気に顔から血の気が引いて行き、思いついた俺は携帯を取りだし、ラジオ局へ電話した。

『あ、もしもし? お宅の放送してる《ミッドナイト・ステップ》に変な声が入ってるんだけど……そんな事ないだって? 実際に……おい!』

 ちゃんと路肩に車を泊めていたのに、唐突に通話が切れてしまった。

 電池はちゃんと三本立っていたし、あっちで切ったとしか思えない。


「ふざけてる! ちゃんとリスナーの声も聞けつーの!」

 腹立ち紛れにラジオを切り、CDのボリューム上げてガンガン鳴らしてから走りだした。

 家へは後五キロってとこか。急に眠気が襲ってきて頭を振って煙草に火をつける。

 踏み切りで一旦停止してから走り出そうとしたら、急に車のエンジンがストップしてしまった。


「何だ、この上車までかよ!」

 両手でハンドルを叩きつけ、車を押そうとドアに手をかけた瞬間、ロックがかかり中に閉じ込められてしまった。


「ふざけるなよ!  触ってもいないのに……」


 その時、CDが急に止まったかと思うとラジオからまた声が……

『……ザザッ……アト…ジュ…ウ……キュウ……フン……』


「助けてくれ………!!」

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