好きを手放すその日まで

神崎

好きを手放すその日まで

想像して欲しいんだ

僕にも君にも間違いなく子供の時代があって

好きだったものがあったはずなんだ


例えばそうだな、お気に入りのぬいぐるみがあったとしたらさ

目が覚めたときには隣にいた筈だし

遠くへ遊びに行く時だってその手を握っていた筈なんだ

好きなんかじゃない毎日の中でいつもいつまでもいっしょに


手を握っていることすら忘れてしまうくらい好きなものだった筈なのに

僕らはなんで手を離してしまったのだろう


多分些細なことだったんだ

例えばそうだな、青い空に浮かぶ白い雲があったとしたらさ

綿菓子のような姿に心躍らされた筈だし

流れる速さを不思議に思って悩まされた筈なんだ

好きじゃない日に生まれた新しい好きに一瞬目を奪われたんだ


掴もうと手を伸ばして気付いた

僕はずっと何かを掴み続けていた

目の前にある好きを掴むためにこの手は空いてなかったんだ

手は空になり、手は埋まっていた


手放してきたものはいくらあるのだろうか

考えてみるけれど多分僕は思い出せない

当たり前のようにあったものだから


何が好きなのかわからないし

もしかしたら好きなものなんてもうないのかもしれない

でもきっといつか、僕は好きを手放すのだろう


その日までこの手に掴んだものを掴み続けよう




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好きを手放すその日まで 神崎 @kanzaki-izumi

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