第17話 バスケットガール柏木夏樹
自転車を走らせ家に着くと、身体は汗だくになっていた。これほどになると夕食の前に風呂に入りたくなる。
冷蔵庫の中の冷えたミネラルウォーターをコップ一杯だけ飲んだ。火照った身体にはキンキンに冷えたミネラルウォーターが最高にうまい。大人になるとこれがビールとかになるんだろうか。
風呂の掃除を済ませると、お湯が溜まるまで、買ってきた本を整理しておこうかと、本を自分の部屋まで持っていき、本棚のどこに置こうかと少しの間考えた。
今日買ってきた本は、ライトノベルになるようだ。
「ライトノベルはここだな」
僕の本棚は純文学、ミステリー、ホラー等だいだいだけどジャンルごとに整理している。そうしないと本の数が多くなってきて、読み返すときに探すことになるからだ。
今日買った本を一旦本棚にしまう。夕食を食べ終わったらまた出して読むんだけど……。
全体をざっと見ると、先日購入した本を見つけた。「スノードーム」というタイトルの本だ。
この本の内容は、二人の男女が恋に落ちる恋愛もので、最後に男性のほうが女性を守るために命を落とす、それを追って女性も後を追うというような悲恋の物語だった。好きな作家だったから読んだけど、正直いうと、今の時代にこんな悲恋の物語なんか流行らないだろうなと思っていた。しかし、作家のネームバリューなのか、そこそこ話題にもなっている、それの影響なのか、置物のスノードームも流行りだしているようだ。本に関しての流行りはちょっと自信あったけど、この作品がヒットするとは思わなかったので、ちょっと驚いている。
風呂の給湯完了のお知らせが聞こえた。
早く風呂に入って自転車でかいた汗を流して夕食にしたいところだ。
風呂から出て、リビングに入ると、妹の
「夏樹、帰ってたのか、ご飯は食べた?」
「ただいま、食べてきたよ、あたしもお風呂入ってくるね」
やや色素が薄く茶色にも見えるセミロングの髪を後ろでちょこんと束ね、発せられる声は活発で張りがある。部活はバスケットをしているスポーツ少女だ。
そんな夏樹からは、焼き肉の匂いがしてきた。県大会を順調に勝ち進んでおり、主力選手として活躍しているようだ。今日はそのお疲れ様会ということだった。お疲れ様というのは負けたわけじゃなく、この先も頑張ろう、いったんお疲れ。ということらしい。中学三年の最後の大会ということもあり、毎日気合を入れて部活に励んでいる。進学先としては僕と同じ高校を狙っているようだ。近いことと、女子バスケット部がそこそこ強いというのが理由のようだ。
夏樹が風呂へ行くのを見送ると、僕はさっそく夕食を食べることにした。
弁当のふたを開けると、まだほんのりと温かい。
そう……これは、雪乃のおふくろ弁当! なんか意味が分からないが雪乃の手作りだ。これでレンジで温めました。とかだったら僕は泣いてしまうかもしれない。
弁当は白いご飯にごま塩がふっており、真ん中に梅干しがのせてあった。そして、おかずにはハンバーグ、キャベツとトマト、そして少しのきゅうりの浅漬け。
ハンバーグを一口食べると、空腹だった腹が刺激されて、箸が止まらなくなった。
あっというまに完食し、お茶を飲み干す。
後片付けをしていると、夏樹が風呂からあがってきた。
「テレビ見ていい?」
「いいよ、僕、本読むから」
夏樹は濡れた髪をタオルで拭きながらリモコンでテレビをつけた。テレビに録画されているデータを再生し、女子バスケット日本代表の試合をつけた。
家に帰ってもバスケットの研究とは、今回の大会はかなり気合が入っているようだ。
「じゃあ僕は部屋で本読んでるよ」
「あーい」
片づけを済ませて自分の部屋に入った僕は、今日買った本を手に取り、机に向かった。
今日買った本はライトノベルで上下巻と外伝、そしてアフターストーリーの四巻完結の作品だ。有名なアニメ制作会社のコンクールで、コンクール発足後、ながいこと大賞が出なかったが、今年初の大賞を受賞したということで話題となった。僕も興味を持ち購入にいたった。
その夜は本を買った初日でいつも通り、寝るのが遅くなった。
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