第2章 夢の機械
ケンは、自分の夢のマシンを世に送り出すことに胸を躍らせていた。何人かの友人や家族に試してもらったが、皆、好評だった。そして、「これは、本当に画期的なものだ」と確信した。
そこで、彼は自分の発明を公表し始めた。ウェブサイトをつくり、ブログを書き、ビデオをつくって、ドリーム・マシンの仕組みを説明した。やがて、世界中の人々がケンの発明を話題にするようになった。
メディアも注目し、やがてケンは、世界中のジャーナリストからインタビューを受けるようになった。テレビ番組やラジオ番組にも出演し、ドリーム・マシンの可能性を語っている。そして、この発明をめぐる話題は、日に日に大きくなっていった。
しかしその一方で、新たな問題も発生した。ドリーム・マシンが欲しい、実際に使ってみたいという人が続出し、ケンはどうしたらいいかわからなくなった。ケンは、この機械をまず一部の限られた人に実験的に使ってもらい、その安全性と有効性を確かめたいと考えていた。しかし、より多くの一般の人たちは既に、ドリーム・マシンにアクセスすることを強く求めている。
ケンは決断を迫られた。ドリーム・マシンを表に出さぬまま、一部の人たちだけでテストを続けるか、一般に公開してその結果を受け入れるか。
結局、彼はドリーム・マシンを公開することにした。そして、ドリームテック社という会社を設立し、機械を一般に売り出した。
すると、その反響はすさまじかった。本社の前には、このドリーム・マシンを手に入れようとする人たちが列をなしていた。何百万人もの人々が、鮮やかな夢を見るために機械を使っているのだ。
ケンは有頂天になった。自分が作ったものが、人々の生活を変え、想像もしなかったことを体験させてくれるのだ。彼は、先見の明があり、天才であり、英雄であると賞賛された。
しかし、称賛の声が上がる一方で、ケンはある疑念を抱かずにいられなかった。もし、自分がコントロールできないものを作ってしまっていたとしたら・・・。ドリーム・マシンが予期せぬ結果を生んだら・・・。
いいや、そんなことはどうでもよいと、自分の発明が成功したことを喜ぼうとする。しかし、心の底では、この先には困難が待ち受けていること、そして、この夢の機械が期待したような成功を収められないことも知っていた。
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