エンドロール

「え」


「だ、だから私のこと好きでしょう?」


「え?え?」


「だ!か!ら!私のこと好きなんでしょう!!知っているわよ私のこと絶世の美女だと思っているって言うのは!!」


「え、ちょっと待ってそれが理由?」


とんでもない理由だった。

彼女は少し頬を赤くし照れていることを隠すようにいつもより大きな声で


「大事よ!私のこと好きなら私に従ってくれるでしょう!」


「僕、結城さんの見た目はとても綺麗だと思っているけど内面的にはそんな好きでもないよ?」


「え?」


「だって結城さん内面冷徹だし、すぐ馬鹿にするし好きになる要素ある?」


そう問いかけてしまったと思った。言い過ぎたと。彼女は先ほどとは違った意味で顔を蒸気させ、こちらを睨んでいた。


「ご、ごめん。嘘!う「それで?私の助手になるの?ならないの?」


あ、これダメだ。断ったらなにされるかわからない。


「わ、わかった!やる!やらせてもらうよ!」


(こう言っとけば、とりあえずは大丈夫だろう。後は適当な理)「由をつけて逃げよう。」


「って思っているわよね。私相手の顔見たら大体分かるのよ。通じないわよ。」


これはダメだと思った。断っても終わり、承諾するしかないのか。


「わかった。やるよ。ただ。」


「ただ?」


「条件がある。」


「いいわよ。何でも言いなさい。ただ下卑た条件だったら分かっているわよね。」


彼女はそういい僕を冷たく睨んだ。


「ち、違うって。教えて欲しいんだ。これまでに僕が受けた怪奇現象の真実を。僕に分かる言葉でね。


「いいわよ。」

即答であった。

少し面食らったが僕は続けた。


「僕が経験した怪奇現象は二つだ。一つ目はあの坂道に君がいると思って近づいたら一瞬にして消えたこと。二つ目は僕の好きな作家【サザナミアルト】先生の小説と僕のその体験がかぶっていた件について。」


ここまで聞いて彼女はまたため息をついて答えた。


「さっき私があなたを合格にした理由もう一度言ってみてもらえる?」


「結城さんが見える。好奇心。結城さんのことがすき。」


「最後のはいいわ。一番最初の私が見える。あの坂道で私のことをしっかりと視認しているのは、あなただけだったのよ。」


「え?でもみんなも見たって・・・。」


「視えない人が見ると得体の知れないものって自分が見たい姿か、ぼんやりとしか映らない。」


「だけどあなたは私を視認した。それだけでなくその好奇心で近づいてきた。」


なるほど、それであのとき合格って。


「ありがとう。お陰ですっきりしたよ。それでもう一つの方は?」


こちらは魂だなんて言葉じゃ片付けられないほどの奇怪なものだった。


「それは、あまり言いたくないのだけれど。その、私が書いたのよ。」


「ん?」


「だからその小説は私が書いたの!」


「いやあの本はサザナミアルト著だよ?」


「だ!か!ら!私がサザナミアルト!」


「え?え?えええええええええええええええええええええ!」


そう言うと彼女はまた頬を赤く染め下を向いた。確かにペンネームを言わされるのは恥ずかしいのだろう。

だが、仮に彼女が書いたとしても疑問がまだ残る。


「結城さんが書いたのはわかったよ。でもどうして僕の行動を読んでいるみたいな。」


「私は夢に入ることもできるけども予知夢をみることもできるの。そしてその予知夢をそのまま小説にしているのよ。予知夢で見た光景があの坂道での出来事だったの。まさかその相手があなたで私の作品を読んでいる人だとは思わなかったけども。」


「て、てことは結構偶然が重なってあんなことに・・・。」


驚きを隠せなかった。頭がパニックになっている。

だが彼女はそんなことお構いなしに続けてくる。


「これであなたの身に起きた現象は解決よね。これで助手になってくれるわね。」


「え、ちょっとまって。うんありがとう教えてくれて!でもちょっとパニックだから待って助手って何するの?次の新作いつ出ますか?いつまで助手なの?サインもらってもいいですか?」


「ファンとしての質問混じってるわよ。それは今度まとめて答えてあげる。助手は昨日の夢みたいに怪奇現象解決を手伝ってもらう。助手の期限はない。これでいいかしら?」


その彼女の回答に僕の体にヒヤッとしたものが流れた。そして疑問が湧き上がってきた。他者を助手にして巻き沿いをくらわせてまでどうして怪奇現象を解決するのか。小説のため?なにか別の目的が?


「どうして怪奇現象を?」


「趣味よ。ただの。」


あっけない返事だった。


「それだけ?」


「そうよ。」


「それに僕も?」


「一人じゃ危ないわ。」


納得はできなかった。ただそれ以上にわくわくしている自分がいることを否定できなかった。彼女はそんな僕を見て


「決まりね。まずはこの学校の七不思議を一つずつ消化して行く。」


「え?いまから??」


「そんなわけないじゃない。私たちの活動は基本夜。そして活動拠点はここ。クラブの申請もしておいた。」


用意周到な女である。


「でもここにしていたって、昨日で解決できる確証はなかったでしょう?」


「だから昨日急いだのよ。」


自分の私利私欲の為に霊まで急かすなんて恐ろしい人だ。


「とにかくもう学校が始まる。この話の続きは授業後部活で。後、今日中にクラブの入部届出しておいて。」


「わかった。それでクラブ名は?」


「怪奇伝承研究会」


「そのままじゃん。」


こうして怪奇現象を中心に僕と彼女の忘れられない1年が始まる。

それは肝試しのように背筋が凍ったり、スポーツのように血が沸き立つものであったり、ラブロマンスのように甘いものだったりと、僕の青春を彩っていくだが、その物語は僕だけの宝物で誰かに話すようなものでもない。だれだって素敵な宝物は隠したくなるものなのだから。

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夕刻に彼女は @makimaki710

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