帰還

気が付くと自室のベットであった。息は少し乱れ、寝間着は汗ばんでいる。

窓から差し込む朝日が僕の脳を覚醒させる。

朝日で脳が覚醒するよりも早く、最後の言葉に従い、服を着替え学校へと自転車を走らせた。

朝だからかいつもより早く自転車が進む気がする。

もう夏だというのに涼しげな風が吹いているからだろうか。気持ちがいい。

もうそろそろ学校に着くところであの坂道を通りかかった。


(思えば、最初に彼女に会ったのもここだったな。そういえばあの本との一致や合格やここで姿を消した謎はまだ教えてもらっていないな。でも魂だけで人の夢に入れたりするんだから・・・。)


「あ!そうか!あれは魂だったのか!」


思わず大きな声が出てしまい、恥ずかしくなり見回すがこの辺は住宅街でなかったので僕の声は森林に吸い込まれていった。

だが恥ずかしいものは恥ずかしいものだ。その恥ずかしさを振り切るようにまた思案を巡らせた。


(あれは魂だったのか、そう考えると急に消えたことにも説明が付く。だけどそれがなぜ僕や他の生徒にも見えていたのか。合格とは一体何だったのだろうか。)


考えても謎は深まるばかりだった。考えながら歩いていると背後より


「うんうんうるさいわね。なにを踏ん張っているの。」


そう背後から話しかけられてビクッとし、後ろを振り返ると口を開かなければ絶世の美女が朝日に照らされてその綺麗な髪をなびかせていた。


「え、どうしてここに。」


彼女は僕のその言葉に呆れた表情を浮かべ


「どうしてって、昨日いったでしょ?」


と指を指した。その先には昨日の部屋があった。

どうやら考えすぎて気付かないうちにここまで来ていたようだった。


「そんなところでぼーっとしてないで早く入ったら?」


「あ、ああ。ごめんね。」


と僕の横を通り過ぎて先に部屋に入る彼女の後を追い、部屋に入った。


「それで、どうして僕をここに?」


当然の疑問を彼女に問いかける。彼女はこちらもみようともせず


「それよりなにか気にならない?」


と逆に問いかけてきた。


(なんだろう。昨日はどうだったかな。昨日は確かここに来るまで大変だったな。ついてからもすごい重苦しい雰囲気で。あ!)


「あの重苦しさがない?」


「正解。ということは?」


「無事。成仏したってことかな。」


「正解ね。寝起きにしては頭回っているじゃない。よかったわ。」


どこまでも上から目線な人である。


「それで僕を呼んだ理由は?これを確認したかったってこと?」


僕は最初の問いかけに路線を戻し、再度問いかけた。


「それもあるわ。この時間に呼んだのはこのため。できるだけ人がいない時間帯に確認しておきたかったのよね。でもそれだけじゃないわ。」


「じゃあ他には?」


「あなたの勧誘よ。前に言ったじゃない、合格って。「だからその合格ってなに?」


一緒に気になっていた回答も聞けそうだと思い悔い気味に聞いてしまう

彼女は少し鬱陶しそうな顔をし、続けた。


「あなたは私の助手としてぴったしなのよ。私の姿が見えるし、好奇心が強い。それに」


「それに?」


「私のこと好きでしょう?」

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