心情ダイヤモンド

自分でもなんで止めたのか分からない。けど違うと思った。


文子さんは戸惑った顔をし、その口をつぐんだ。

それをみて結城さんが僕をキッと睨み


「三本木くん。邪魔しないで貰えるかしら。もう少しですべて終わるのだから。」


その発言に背筋がヒヤッとしたけどもう止められない。僕は結城さんの方を向き


「結城さんさっきから随分簡単に人の気持ちに折り合いをつけさせようとするけど、人の感情はそんな簡単じゃないんだ。謝って済む話ならこんな何十年もここに住まないよ。」


「あなたに何が分かるのよ。彼女が謝りたいと言ってたじゃない。」


「それも本心だと思うよ。だけれども感情はそれ一つじゃないんだ。僕にもその気持ちすごい分かる。」


僕はそういい、昔なじみの二人を見やった。二人はそんな僕をみてうなずき


「結城さん?だっけ?光はな。昔から国語の読解のテストだけはすごいよくできるんだ。よく周りを気遣っていたからかな。まぁ気遣いすぎて変に突っ走る部分もあるけどな。」


「そうそう。光ってばね。自責の念が強いというか思い込みが激しいというか。普段はおとなしいのにね。」


と褒めているのか馬鹿にしているのかわからないような言い方で僕に続いた。

そして僕は今一度、文子さんへ顔を向け、

「文子さん。あなたはどうしたい?せっかく会えたのに謝るだけでいいの?」


そう訪ねると彼女は少し涙ぐみながら


「ありがとう。そしてごめんなさい。わたし、先生に言いたいことも聞きたいこともたくさんあるの。あのとき伝えられなかった私の気持ちとか。」


そして結城さんに


「ごめんなさい。結城さん。わたしもう少しゆっくり恭一郎さんとお話したい。だめかな?」


と潤んだ目で訴えかけた。

結城さんは額に手を当て少し肩を落とし


「分かったわ。急がなくてもいいわ。あなたの後悔一つ残さないようにしてきなさい。」


少し笑みを浮かべながら僕らに背を向け扉に向け歩き始めた。


「結城さんどこへいくの?」


その背に問いかけると、少し首をこちらに向け


「今から二人だけの時間を過ごすのに私たちがいては邪魔でしょう?少し外で待っていることにするわ。そんなことに気付かないなんて読解力がないのね三本木君。」


とクスッと笑った。その笑顔は今までみたどの笑顔よりも綺麗な笑顔であった。

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