天使か悪魔か

 そしてついにたどり着いた。昨日も見たこの光景。昨日は恐ろしくて足が竦んだけれども今日は二人がいる。

僕は一息つきすべての元凶へと続く扉に手をかけた。

重く苦しいこの空気と違ってその扉は案外簡単に開いた。その後の景色は驚くほど唖然とするものだった。


 部屋の中は昨日みたいに真っ暗ではなく、明かりがついており、部屋の中には椅子に座り黙々と本を読んでいる結城さんと、なにやらうずくまって泣いている?ような女子生徒がいた。

結城さんは僕に気がつくと。

「遅いわよ。」


と本を読んだまま話しかけてきた。


その奇っ怪な情景に僕より先に未桜が発言をした。


「なんなのこれ。ねぇあなたなにか知っているの?今この学校で何が起きているの。その子はだれ?どうして泣いているの?」


一気に畳みかけた。それに対し彼女は


「この子はあなたたちのほうが、詳しいんじゃない?昨日あなたもこの子の話をしてくれたじゃない。」


彼女はそう言い僕をちらりと見た。


「えっ、それってまさか。」


「そのまさかよ。この子はこの学校の七不思議に出てくる幽霊よ。」


突然すぎて言葉が詰まった。一気にたくさんのことが畳みかけてきた気分だ。

泣いている子は学校七不思議の女子生徒?でもなんで泣いているんだ。それに結城さんはなんでこんな場所に。

と考え込んでいると。彼女はため息をつき


「まぁ今の学校の状況は教えてあげるわ。」


そして僕らの方を向き話を続けた。


「まず大前提としてここは現実ではないわ。ここは夢の世界。今の学校はあなたたちのしっている学校ではなく同じ作りにしてある全く別物の場所よ。」


急に分からないことばかりをいわれ困惑し彼女にどういうことか説明しようと思ったが


「今、私が話しているの。だから静かにして貰える?」


と言われ開けた口を塞ぐしかなかった。


「まぁ聞きたい気持ちも分からなくないけども今は少し待って。私は人の夢に入り込めるの。そこであなたの夢に入り込んだ。そしてあなたの夢でこの校舎を構築しあの怨霊を呼び込んだ。」


彼女は嘘だろと思うようなことを平気で喋り始めた。先ほどみたいに怒られるのは怖かったので黙って聞くことにした。


「賢明ね。そしてこの子をここに呼んだ理由は力を弱らせるためともし暴走状態になったときこの子の力はもうそろそろこの部屋だけでは抑えきれなくなっていたからね。まぁその二人が来たのは想定外だったけど。これが今の状況。なにか質問はある?三本木君は長そうだから両端の二人からどうぞ。」


そう問いかけられ二人は質問を投げかけていった。


葵からは自分と未桜はどうやってここにいるの?と。未桜からはどうやって人の夢に入るの?と。

だが答えは


「あなたたちがどうやって入ったかはわからない。私は物心つくときには出来ていた。」


とだけであった。

チラッと未桜を見たらもの凄いぶち切れそうな顔をしていた。

だが家族や僕でなかったからなのか。ギリギリなところで堪えていた。

そして僕の質問の番が来た。


「色々質問したいことがあるけど、二つだけ。どうして僕の夢の中なんですか。どうやって力を弱らせるんですか。」


その質問に対しても彼女は顔色を変えず


「それはあなたが合格だからよ。それだけ。力を弱らせる方法は彼女の後悔を聞いてすっきりさせてあげることよ。ようはお悩み相談ね。」


え?


僕は困惑した表情を彼女に向けた。どっちも訳が分からなすぎる。


「とりあえず見てもらえば分かるわ。合格の意味はその後でもいいかしら?」


僕はその言葉に頷いて見せた。それを確認し結城さんはは泣いている女子生徒のもとへ進んでいった。そしてへたり込みうつむく彼女の前にしゃがみこみ彼女の顔をのぞき込み、とんでもないことを言い放った。


「ねぇ、早くあなたの悩み事を教えてくれないと本当にこの部屋に火を付けるわよ。」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る