昔馴染み
僕らは昔は仲がよい普通の幼なじみであった。家も近く親同士も仲良かったため、自然の流れと言えば自然だった。
まぁ普通とはいっても未桜は僕のことを奴隷扱いしてたし、葵に至っては生まれながらの奴隷だった。まぁ普通とは言えないまでも良好な関係ではあったと思う。
あの事件が起きるまでは。
未桜は昔から勝ち気な性格であった。男であろうと女であろうと売られた喧嘩は買うし絶対に負けなかった。それが子供ながらにカリスマ性があるように見えたのかは分からないが周りには常に人がいた。
小学生まではそれでよかったのかもしれない。男も女もあまりなかったから。多少傲慢であっても彼女の引きつける見た目やはっきりとした性格はだれからも好かれていた。だが中学生になるとそうはいかなかった。
周りも自我が芽生え始めるし成長期に入って見た目も中身も大人になっていく。彼女の傲慢さやわがまま、そしてその見た目が狙われる的になってしまった。
普段から僕や葵といたからなのか。男に媚びを売っている。見た目がいいと多少のわがままでも許されるなど。最初は数人のただの陰口であった。それだけだったら未桜はあまり気にしなかった。
だが、次第にそれはエスカレートしていった。結果彼女はひどく傷ついた。
そんな傷ついた未桜に僕はなにもできなかった。そして助けを求めていた彼女を傷つけてしまう行動をとった。その後二人を遠ざけた。どうしてあのときもっとうまくやれなかったのだろう。そしていまでも自責の念で押しつぶされそうになっている。
その後彼女は自分を出すことを辞め、世渡りを身につけ葵はそんな未桜に無理をさせないようにうまくサポートをしている。
そして僕はまだこの幼なじみと一定の距離を置いている。彼らから話しかけられさえすれば話すものの自分からは近づかない。それが最善だと思っていた。これが一番傷つけない方法だと。
兄弟ならまだしも異性の自分が不用意に近づけば未桜を傷つける。未桜を傷つけるということは葵を傷つけるのも一緒だった。だから極力近づかないようにしなければという思いだった。
だがそう思っていたのは僕だけだったのかもしれない。二人はこの先何が起こるかもわかならない。だけども僕が困ってそうだったら行くのだ。幼なじみ、いや友達だから。
(そうか、考えすぎていたのは僕だったんだな。もっと素直でよかったんだ。自分の中で苦手だから傷つくからとか思い込んで遠ざけなくてよかったんだ。)
自分の中で納得しながらもう一度二人を見た。二人はクスッと笑って
「なんか久しぶりに光のそういう顔見た気がするよ。」
「ほんとよね。いつ遊びに誘っても嫌々でなんか遠ざけようとしてる感じしてたしね。」
僕も彼らの顔を久しぶりに見たかもしれない。そして初めてこの怪現象に感謝をした。
「二人とも、ありがとう。僕と一緒に来てくれる?」
と手を差し出した。その手をもちろんと言うようにパチンと叩き三人で階段を降りた。
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