現実か真実か

気がつくとそこは一面霧に包まれた場所であった。僕はいつの間にこんなところに。

周りを見渡してもなにも見えず、前に進もうと後ろに進もうとただ霧が体を撫でるだけであった。その場所に僕は少しおびえた。先が見えない、答えの見えない道など恐怖でしかないからだ。誰しも進む道には希望であり絶望でありなにかの道がある。だがこんな霧が深ければどこへ行っていいのかが分からない。それこそが真の恐怖なのだと身をもって実感し、そして、その場に立ち尽くしてしまった。希望も絶望も見えぬこの場所に諦めを起こしていたのだ。夢であってもこの状況は恐ろしすぎる。そして諦め、その場で立ち止まり、暫く時を待った。そのとき


「そう。道がどこにも見えないなら立ち止まってみるのもいい。そうすることで見えてくる道もある。」


この声は?とはならなかった。ここ最近で、一番記憶に残る声だったから。だがその声の主は霧に包まれて見えない。


「結城さん。結城さんなんだろう?どこにいるんだ?姿を見せてくれないか?」


そういうと後ろの方からざっざっと地面を踏む音が聞こえてきた。

その音に合わせてパッと後ろを振り返ると、まだ霧で隠れている人影が見えてきた。だがその人影はこちらへと一向に進んで来ない。


「結城さんなんだろう?こっちに来てくれないか?」


そういってもこちらへは進んでこない。その態度に焦れったくなった僕は、彼女の方へ駆けだした。だが一向に彼女には追いつけず、さらには人影も見失ってしまった。そのときまた後方から


「幻は所詮、幻。つかめないから幻なの。あなたの悪いところは焦って何でも進めようとするところね。なら私の姿を見せてあげる。後ろを見たいなら見てもいいわ。でも後悔はするわよ自分の短絡的な思考をね。」


その言葉にカッとなった僕はそのまま後ろを向いた。そこにはいつもの可愛らしい姿ではなく目はつり上がり、口は耳元まで避け鬼のような顔をした彼女が立っていた。


 バッと、起き上がった。息はまだ荒れていて、全身は汗でグショグショになっている。


(夢だったのか。それにしても昨日のことに引き続きこんな夢、なにやら今日は嫌な予感が

するな。)


今日、結城さんにこれまでの話を聞くことになっているが、それが少し恐ろしく感じた。


(でも聞かないと、今後もこうやって苦しむことになる。今日だけだ。すべてを知って楽になろう。でももし夢の通り彼女は人でないものだったら。)


あんな夢の後だから色々と考えてしまう。そのせいか学校に行くのをやめようかと考えたが、やはり聞かないと始まらないのだ。と自身を奮い立たせ身支度を備え学校へ向かった。


(今日は不穏な天気だ。)


空を見上げまた少し嫌な予感がしたが首を振って暗い考えを振り切りしっかりとした足取りで学校へ向けて歩いて行った。

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