闇への誘い

(これだ!!)


これは好機だと畳みかけることにした。


「そうなんです。あるんですよこの学校の七不思議。今から向かう部室棟。その3Fの一番

奥の教室は開かずの間となっていてその部屋には昔自殺した女子生徒の幽霊がでるとか。」


その話をして盛り上がらないと言うことはないと言われているくらいこの学校の生徒の間では誰もが知るというような話だった。

だが、彼女は違った。なんだそんなものかと言うような顔をしてまた歩き始めた。


(やっちまったー・・・。ドヤ顔しちゃったのがよくなかったかな。早口になってて気持ち悪かったのかな。)


結構へこんだ。しばらく沈黙が続いたが渡り廊下を通り部室棟につき、また説明を始めた。


「ここが部室棟です。うちは文化系の部活がたくさんあるから、棟を作られたと言われていますね。それでもまだまだ部室は余っているので新しい部活の申請も通りやすいみたいですよ。結城さんもなにかやりたい部活があれば申請してみるといいかもしれませんね。」


 と伝えたがさほど興味はなかったみたいでそのままスタスタと歩いて行ってしまった。

僕はまた失敗かと思いながら彼女の後をついて行き、彼女がもし質問してきたときにいつでも答えられるようにしていた。だが、彼女の足はどこの部室の前で止まることもなくまっすぐと前に進んでいた。そしてある場所で彼女の足は止まった。


 そこはどこぞの部室でもなく、だれが使っているかも分からない部室棟の1F一番奥の部屋であった。ここは先ほど彼女に伝えた七不思議の一つの場所でもある。


(初めてここまで来たけど嫌な感じがするな・・・。この間の感覚と一緒だ・・・。)


この教室の前に立つとこの間の恐怖体験を思い出して足が竦む。ただ彼女にとってはなんともないようでドアを開けようと手をかけている。


「だ、だめだ!そこは開けてはいけない。」


その言葉にまたもや返答はなかった。そして彼女はその扉を開けてしまう。外はまだ太陽が出ており明るいというのにこの部屋の中は真っ黒。闇という言葉を体現できそうな暗さであった。

室内の暗闇へ彼女は臆することなく進み、次第に体は闇に吞まれて行くようだった。

腕を引っ張り部屋からだそうと考えたが体がうまく動かない。緊張でこわばってうまく動かせないのだ。そして彼女の姿は完全に部屋に入りその姿は目で見えなくなってしまった。

そのときまた僕の中でいけない感情が表れてしまった。その感情のせいでこの間も失敗したというのに。そう、好奇心である。

この好奇心というのは恐ろしい。知りたい感じたいという欲求のみで体が動いてしまう。

恐ろしいとか、苦しいとかそういう感情を丸めてすべて捨て、知識的欲求を追い求めるようになってしまう。

そして一歩、また一歩と僕は進み始めた。その暗闇から見えない糸に引っ張られるように少しずつ進んでいった。

だが不思議と前回よりも怖さはなかった。もちろん怖くはあったのだがまぁ前よりも大丈夫かなという感じだった。

そのままゆっくりと暗闇の中に体がめり込んでいく。そしてあっけなく視界は闇に包まれた。

「おーい、結城さん。大丈夫?」


返答はなく奥の方からガサッと言う音が聞こえた。そっちにいるのかと奥の方に向け歩き始めた。そのとき


「やっぱり君は合格だね。」


はっきりと聞こえた。あのときと同じ声音決して大きい声でないのに耳にしっかりと届くその声を。

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