一筋の光

 午後の授業はいつも通り進みもうすぐで本日の授業が終わろうとするとき僕はものッすごく緊張をしていた。


(この後結城さんの学校案内か。緊張するけどここで仲良くならねば。)


普通の男子高校生であれば、二度も話せなかったという事実はとても悲しいものだろう。だが僕にとっては大したことではない。今まで散々未桜で鍛えられてきたお陰なのかもしれない。

だがたいしたダメージではないにしてもHPはガンガン削られているのだ。


(こういう精神的なタフさは未桜に感謝だな。)


と一人心の中で合掌していると授業終了の鐘が鳴った。


 正直、二度返事が返ってきていない相手にまた話しかけるのはかなりきついのだが、なにもしないで帰るのも後が怖すぎるので腹をくくり彼女の方を見やると驚くべき光景が目に入った。その光景に僕は愕然とした。なぜなら彼女の姿はパッと消えており、目に映るのは窓から見える真っ赤に燃えた夕焼け空のみ。この事態を飲み込むのに暫く時間がかかった。だが、飲み込んだとしてもこの状況が理解できなかった。

彼女は先生から学校案内の旨を伝えられ了承したと聞かされていた。なのに、今この場には彼女の姿はいない。


(トイレでも行ったのか。それとも本当に僕のことが嫌で帰ってしまったのか。)


その答えはすぐに分かることになった。彼女はまるで当然のように戻ってきた。そのまま歩を自席の方に進め僕の隣に座った。その一連の流れはまるで武道の所作のようで僕は思わず見惚れてしまった。だがすぐに気を取り直し恐る恐る彼女に問いかけた。


「が、学校案内しますけども、ど、どうですか?」


 と我ながら訳の分からない誘い方だったのだが彼女はこくんと頷いてくれた。

初めて反応してくれたうれしさに身を悶えそうになったが我慢し廊下側に歩きじゃあ行きましょうかといい、彼女が席を立ったのをみて廊下に向けて歩き始めた。

 

「今僕らがいるここが教育棟と呼ばれていて上3階が生徒たちが生活する教室、一階が職員室や実験室などの特別な授業を行う教室になっていて、移動教室などがあっても全部この棟で完結できるようになっています。」


 二人で並んで歩きながら淡々と説明をしていき教育棟の説明が終わり


「ここまでが教育棟です。なにかほかに聞きたいことありますか?」


彼女は僕の問いかけにうなずいただけでこれと言って喋ることもなかった。というよりもここまで説明してきて一言も発していないのだ。


(めっちゃきまずい・・・。なにか・・・。なにか興味をそそられそうな話・・・。はっ!)


「そういえば、学校と言えば七不思議がどこの学校にもありますよね。実はこの学校にも

、」

 

といいかけた時彼女の眉がピクッと動いたのが見えた。そして歩みを止めこちらを向いた。

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