寂しい背中

 僕が教室に着くと、教室内はひどく騒がしかった。そして僕の席あたりにたくさんの人だかりが出来ていた。

細かく言うと僕の席ではなく、今日来たばかりの転校生の席だ。


(こんな田舎に転校生ってだけでなくあの容姿。みんなきになるよなぁ。特に男子。僕だって気になるもん。)


だが一つ気になることがある。それは彼女が喋っていることだ。周りの声が多すぎるのか彼女の声が届いてこないが、確かに彼女は楽しそうに口を開いている。

僕は目に見えて落ち込んだ。こんなことで落ち込むなんてと思う人もいるかもしれない、でも考えてみて欲しいのだ、今日初めて会った人に嫌われるという気持ちを。

ほんとに嫌われているかどうかでは定かではない。本当に僕の声が聞こえなかったのかもしれない。そういう可能性もあるかもしれないが、実際にこのような現場の主として置かれてみるとよくわかるのだ。


(きついよぉ・・・。きつすぎるよ・・・。僕が何をしたって言うんだ。僕が陰キャすぎるからなのか?)


とこのように一切の可能性を捨て悪い方向へと進み、さらにさらに悪い方向へと進んでいってしまうのだ。

一人暗い気持ちになり、これ以上見ていると気持ちがほんとに病んでしまいそうな気持ちになったので僕は教室を後にし、校内の中心にある広場でご飯を食べることにした。

僕の高校は真上から見るとコの字になっており上側の出っ張り部分が教室等、下側の出っ張りが部室等となっているのだ。ちなみに出っ張っていない部分は渡り廊下となっている。

そのコの中が中央広場となっており、ベンチやバスケコートがあるため昼休みなどは大勢の人で賑わうのだ。いつもならベンチが開いていることなんてないのだが、今日であれば大丈夫であろう。その理由は考えなくてもいい。


(考えたらまた悲しくなっちゃうからね。)


ちなみに先ほど葵が向かった校庭は、教室等の向こう側にあるのでここでかち合うことはないだろう。そ

その後は空に浮く雲を眺めながらぼーっとしていると午後の授業の予鈴が鳴り、そろそろ戻らなきゃとベンチを後にした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る