シスコン
授業は進み昼休みを知らせる鐘がなりそれと同時にお腹の鐘も鳴り始めた。
(ふー、今日は色々あったからお腹すいたな。なにを食べようかな。)
うちの両親は共働きなので朝は自身が食べる朝食と一緒に僕の分を作ってくれるのだがお弁当を作る時間まではないそうで朝食の横に500円玉が毎日置かれておりそれが僕の昼食代となっている。
僕は毎日その500円玉硬貨を握りしめ、我が光越高校の購買こと『光悦堂』へと足を向けた。光悦堂に到着し、いつも通りカレーパンとメロンパンそしてイチゴミルクを注文し教室で食べようと教室に向かっていると後ろから「おーい!三本木!」と呼ばれた。
後ろを振り返ると顔なじみのイケメンがこちらに駆け寄ってきていた。
「よっ。」と軽く返事をしながら僕の肩を叩き僕の横を歩いてきた。
彼は違うクラスなのだがわざわざなんのようであろうかと考えていたら彼が続けて
「今日は大変だったらしいじゃん?美少女転校生に、美人教師からの落雷。お前に取っちゃ忙しい午前中だったんじゃないか?」
と半笑い気味で僕に問いかけてきた。
「なんだよ。笑いに来たつもりなら僕はもう行くよ。お腹がすいてしょうがないんだ。」
僕はこいつのことが少し苦手である。別にこのおちょくった態度とかイケメンなところが苦手って訳ではないんだけども。いや後者はやっぱむかつくな。いやまあむかつきはするんだけどそれだけだったら苦手だなんて思わない。僕とこいつは幼なじみだしね。そうなんでこいつが苦手かと言うと
「昨日妹となんかあった?未桜がでかい声出して電話していると思ったら、ドタバタと出かけていって。ようやく帰ってきたと思ったら顔を真っ赤にして怒りそうな泣きそうなはたまた嬉しそうな顔をして帰ってきたんだよね。何かしらない?未桜が電話であんな態度取るのお前だけなんだよね。てことは未桜はお前に電話をして、お前の態度が気にくわなかったからお前の元に直接行った。その後二人でお出かけをしたところまでは分かるんだよね、でもお前と遊んだ後、大抵満足したような顔して帰ってくるんだよね。あんな顔して帰ってきたのは初めて見たよ。なんでかなと考えても思いつかなくてさ。いつものルーティンのヨガもしてなかったしお風呂入ってるときの【未桜CHANワンマンライブっ】のセトリも恋愛ソング
縛りみたいになっていたんだけど、お前なんか言った?それともなんかした?」
怖い怖い怖い怖い。そうこいつの名前は瀬川 葵(せがわ あおい)瀬川未桜の兄であり瀬川未桜のことが好きすぎる重度のシスコンなのだ。普段はとても気さくでいいやつなのだが未桜のこととこうなってしまうのだ。こういうときの葵に嘘やごまかしが効かない。こういうときは
「そういうのは本人に聞いたほうがいいよ。あ、未桜。」
と指を校庭の方へ指さした。
「なに?未桜が校庭に?さっきまで教室でおいしそうにご飯を食べていたのに!外は危険が
いっぱいだ!お兄ちゃんがすぐに行くぞ!」
そうこれだけでいいのだ。妹のことを考えすぎて暴走してしまった列車は進路を変えて誰の被害も出ないところを走らせるしかないのだ。僕は自身の仕事のできばえに少し誇らしくなりいつもより多少胸を張って廊下を歩き再度、教室へと向かった。
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