冷水
どのくらいその体制だったのだろう。考え事をして彼女の方を向き、呆けていると後ろから稲妻のような痛みが走った。そのまま後方から冷酷な声が聞こえてきた。
「またお前は結城の方をみて。そんなに好きか?お前だけ結城の方を向いて授業受けるか?」
一気に背筋がゾクゾクとして、もう夏だというのに少し肌寒くなってきた。
後ろを向いたら殺られる。そう思わせるくらいの殺気を漂わせた海道先生がそこに立っていた。後ろを向いても殺される。なにも言わなくても殺される。そう思わせるような威圧感であった。その殺気に圧せられながらも、まっすぐ言葉を紡いだ。
「い、いえ。彼女が教科書を持っていないと思って見せてあげようと。」
「ほお?それはお優しいことだな。だけれどもそうやって見つめ続けているのは教科書を見
つめるうちに入るのか?」
と殺気を残しながら僕に問いかけてくる
「はいい!!結城さん教科書ないのであればお見せいたしましょうか!!」
と条件反射で動く犬のように急いで彼女に問いかけた。
だがまた返事が返ってくることはなかった。その代わり後方から
「ちなみに結城は新しい教科書が届くまで職員用の教科書を使っているから安心して授業を受けてくれ。」
「そ、そんな・・。」
衝撃の事実になんだか損した気分になり多少疲れたが
(まぁ、問題ないならよかったな。)
と一人満足し、また授業を受ける体制に戻った。その頃には先ほど彼女に対して思っていた違和感は忘れ去られていた。
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