つかの間の休息
たどり着いたカフェは自宅から少し離れた駅前にあり落ち着いでおり客層も賑やかな学生がたくさんいると言うよりは勉強や読書などを行うようなカフェであった。
ここは僕も普段から駅前で本を買ったりしたあと少し休憩で入ったりするお気に入りの場所なのだが、もうここには来れないかもしれない。
この目の前で馬鹿笑いする女のせいで。
「なにそれ。面白すぎるんだけどっ!じゃあなに?お化けの噂聞いて言ったらほんとに心霊現象にあっちゃってビビって逃げ出して部屋に閉じこもってたってわけ??」
笑うだけならまだいいものを僕のかっこ悪いエピソードを大きな声でいい馬鹿にしてくる彼女は悪魔そのものであった。
「静かにしてよ。頼むから。周りのお客さんに変な目で見られちゃうよ。」
そう懇願したのだがうれしそうに笑う彼女に届くはずもなかった。
「だって、だってよ?いつも根暗なのにそんな大層なことに急にチャレンジし始めたと思ったらそんな結末って、お腹がよじれすぎて体真っ二つになってしまうほどに面白いわ。」
「なにそれ怖いよ。」
彼女はたまに変なジョークを挟んだりしてくるのだが、毎回表現がなんだか恐ろしいのだ。
彼女はその後も、うれしそうに僕を弄り倒し気が済む頃には僕も気持ちが楽になっていた。
(なんだかんだ気遣ってくれたのかな。)
少しだけ彼女の優しさに触れたような気がし
「ありがとうね。未桜。」
と呟いた。
恥ずかしかったので少し下を向きながら言ったのだが、なかなか言葉が返ってこなかったので伝わってなかったのかと思い、彼女の方を見ると化粧をしていても分かるぐらい頬を染め目をまん丸く見開いた彼女がいた。
「み、未桜?」
少し慌ててそう問いかけてもぽーっとした顔でこちらを見ているだけでうんともすんとも言わない。
少し怖くなり顔の近くで手をフリフリするとピクッと彼女の体が少し跳ねた。
「な、なによ。びっくりするじゃない。」
彼女は顔を赤く染めながらキッと睨みつけてきた。
「それはこっちの台詞だよ。急に黙っちゃってさ。」
「あ、あんたが普段言わないことを言い始めるからびっくりしちゃっただけよ。」
(これは逆ギレというやつだな?失礼な奴だ。僕は言葉には出さないけどもいつも心の中で感謝しているんだ。君の傍若無人っぷりにね。)
と思ったが言ったら最期平手打ちでもされて痛い思いするのは明白であろう。
この気持ちは心の中にしまい込もうとしたがやっぱり顔に出てしまっていたらしい。
彼女は今一度僕を睨みつけ
「もういいわ。今日は帰る。」
それだけボソッと言い、スタスタと歩いて行ってしまった。
一人ぽつんと残された僕は、周りからの冷ややかな視線に耐えられなくなりこそこそと退場していった。
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