瀬川美桜
ー瀬川未桜ー
こいつとは幼なじみで昔から家の近所に住んでいるガキ大将のようなやつだった。
僕のことを子分だと口にし、色んなところに連れ回された。大きくなった今でもたまに声をかけられるのだが昔のノリが抜けないのか、今でも手下のように扱われているため正直こいつからの電話だけは出たくない。
だが、出なかったら出なかったでまたほかの問題が発生するため出なければいけない。
暫く考えた後、この先起こるであろう最悪の結末を回避するため電話をかけようとしたが「最悪」が先に来てしまったようだ。家中にインターホンの音が鳴り響く。これは奴が来た証拠だ。どうせ僕が家にいるのがわかってきたのだろう。
外から
「いるんでしょ!開けなさい!」
とインターホンにユニゾンするように聞こえてくる。
なるべく直接は避け電話で乗り切りたかったが直接来てしまってはしかたがない。
こうして考えている間にもドアがガンガンと音を立てその振動が自分の体に響いてくる。
小さくため息をつきながらゆっくりと玄関へと向かいドアを開けた・・・と思ったのだが僕が開けようとした瞬間、ドアが驚異的なスピードで僕の額に向かってくると同時にひどい鈍痛を覚えた。一瞬なにが起きたか理解するのに時間がかかってしまったが、状況は容易に理解ができ、そして目の前には怒りを露わにした少女が仁王立ちで腕を組み、倒れ込んだ僕を見下ろし睨みつけていた。
「出るのが遅い!!電話にも出ない!連絡も返さない!ほんっとあんたって愚図!!鈍間!」
そう感情的に言葉を吐き出し続ける彼女に恐れつつぽつり「ごめん。」と一応の謝罪をし、彼女に問いかけた。
「それでなんの用だったの?こんなに騒ぐほどのこと?」
僕としては単純な疑問として訪ねたつもりだったのだが彼女は気にくわなかったらしい。
「あんたねぇ、金曜日から音信不通になったから、何かあったんじゃないかと心配して駆けつけた幼なじみに対してその態度はないんじゃないの?」
と先ほどより怒りは収まっていたからか冷静に詰められた。
「ごめん。ちょっと色々あって携帯を見ていなかったんだ。ほんとにごめん。」
彼女は僕の謝罪を受け「はぁ・・・。」とため息をつき、少し考えて「よし。」と意気込み
「い、今から遊びに行くわよ!断るのは禁止!5分で支度して!」
と勢い強く遊びに誘ってきた。
ここで断るという選択肢はないだろう。
「分かったよ。でもどこにいくの?」
正直気持ちを入れ替えたい気分だったので嫌な顔をせずに彼女の提案に乗った。いつもはこの時点で彼女にまた怒られているところだ。
「そうね、とりあえずカフェにでも行きましょうか。最近ゆっくり話せていなかったじゃない。」
「了解。少し準備するから待ってて。」
そういい自室へ戻り、寝間着から着替えまた彼女の元へ向かった。
そんな僕を見て彼女はまた大きなため息をつき
「まぁいいわ。早く行きましょう。」
とだけいい先に歩き始めた。彼女は普段から僕と出かけるとき少しだけ悲しい顔をするのだ。昔からだったのでそういうもんなのだろうと思いあまり考えていなかった。
そして今日もそれについては特に考えることなく足早に進む彼女に追いつこうと僕も駆け足気味で彼女を追いかけた。
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