振動シンドローム

次の日、朝起きた僕はいつも通り作り置きのご飯を食べていた。

最近暑くなってきたなとぼんやり考えながら、昨日のことを思い出していた。

開いた次の頁では主人公の部屋のドアが開き親友が現れその場をなんとか凌いだという風なものだった。

その展開に堅くなっていた体の緊張が解け体をベットに委ねた。

先ほどまでは気付かなかったが体全体がぐっしょりと濡れていた。自分で思う以上に恐怖を感じていたのだろう。シャツを着替え柔軟剤の香りが鼻を掠めたとき、ようやく普通の日常が戻ってきたと心から思った。

その先の展開は読んでいないがこの後心霊的なものにまた遭遇するのだろう。

だが先の展開を読む気にはならなかった。今読んだところで感情移入など出来そうもない。

その後は夜更かしする気にもなれずそのまま床につき、目を閉じた。


(あんなことあるものなんだな。偶然とはいえすごい体験をしてしまった。)


と昨日までの恐怖は嘘だったかのように、しみじみと思い出しているとどこからかブーブーとバイブ音が聞こえた。一瞬、背筋がぞくりとしたが、すぐに携帯の振動だと気付くとともに一昨日帰宅してから一度も見ていないことに気付いた。音楽は小型音楽プレイヤーで聞いていたし、そもそも怖がりすぎて携帯を見るどころではなかったのだ。

携帯は自室においたはずだよなと思いゆっくりと部屋に歩みを進めていった。

自室についてもまだ携帯は途切れることなく揺れ続けていた。


(母さん何か忘れ物でもしたのかな。)


とディスプレイ画面を確認し、画面上に表示された名を確認し、即座に電源を落とした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る