忍び寄る影

そしていよいよその通路までたどり着いてしまった。僕は一度目を瞑り、大きく深呼吸を行った。そのとき背中から風が抜けていった。


(いつもの心地よい風だ。僕を包み込んで守ってくれているような気がするよ。)


そう心でこの風に感謝をしながらこれで終わりにしようともう一度目を開けた。


その場にはなにもいなかった。そして何も起こらなかった。息をふーっと吐き今現在助かっている事実に安心しながら脱力してしまった。そう一度脱力して力が抜けてしまったのだ。


「合格。」


その言葉は決して大声のように張ったような声でもないのにも関わらずはっきりとそして耳に残る声だった。

急に浴びせられた言葉にぎょっとし、脱力していた体が起き上がってしまったのだ。急激に脱力から緊張状態になった体はびっくりしてしまったのだろう。そして脳も。その瞬間視界がブラックアウトしてしまった。


 次に目が覚めたときは星々が輝き、とても風も先ほどとは違い少し寂しげな風だった。

状況を理解するまで少しかかったが状況を理解した瞬間這うようにその場を逃げ、すぐさま自転車に乗り帰路へついた。

帰ってからも恐怖心が抜けなかったが、この年になって親と一緒に寝るなど自身の歴史に傷をつけたくなかったので布団をかぶり流行のポップソングを気が紛れるように目を瞑った。

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