聖女と乙女ゲーム

 アルフォは2年年下のはずリディアは思った。あのゲームでは、一年飛び級して入学してきた天才と言う触れ込みだが人との接触を避けており、その才能や出自からも周りからも避けられていた。そのためアルフォ攻略には1年の段階で他の攻略者の好感度を上げすぎず均等に上げる必要があり、二年時の最初にイベントを発生させて貴方は一人では無いと思わせる必要があった。最初のイベント発生条件があまりに厳しいため最も攻略しにくいキャラとされていた。もっとも最初のイベントさえ発生させてしまえば、その後はあまり難しくない。転がり落ちるように主人公の魅力に落ちていくのだ。しかしゲームではいくらでもセーブ&ロードやり直しが出来るのだが、この世界ではそうは行かない。フラグ立てを慎重におこなっていたのだが、それは回避されてしまった。どこで失敗したのかと思い巡らせたが、そもそも学園そのものを飛び級したとか普通分からないよね。確かにここまで話を聞いているとより遙かに知識はあるし、頭の回転は早い。恐らく前の世界ではかなり高度な教育を受けてきたのだろう。前世の知識だけではなく、この世界の言語や魔法、法律、仕組みに対してもあまりに詳しすぎる。その中身は裏設定まで知り尽くしている私を軽く越えている。学園自体を不要と言い切れるのもその自信があってこそだろう。しかし、一年どころか学園まで飛び級して学園に入ってこないと言うことはフラグ自体がそもそも立たないので友情エンドは初めから存在しない解答だったわけだ。


 そう思うと私の選択肢は正しいかったのだろう。悪役令嬢と王子殿下をくっ付け、私が悪役令嬢に成り代わる入れ替わり作戦。悪役令嬢は不幸にならないし、私は面倒な社交界に出なくてすむ。あそこは私が住んで良い世界ではない。三年間でつくづくそう思ったのだ。そのため公爵家と裏取引して、自分が捨てられた娘であることと私と公爵令嬢が入れ替わることで破滅が避けられることを説明したのだ。流石に聖女に手を出そうとしたなどバレたら公爵家とは言え一貫の終わりなのでこの話はすんなり受け容れて貰えたのだ。半分脅したようなものだが結果よしだ。聖女の権能は引き継ぎな可能なギフトであの国では公爵令嬢が今代の聖女なのだから私が居なくてもどうにかなるはずだ。


 この裏設定を知ったとき、忌み子で捨てられた設定とか初め制作の性格の悪さにどん引きさせられたものだが、最終的にはそれが役に立ったのだ。しかし、学園を卒業すると目的がなさ過ぎて困るので冒険者か商人でもやってみようと思ったのだ。


 しかし、聖女のギフトを引き渡したはずなのに彼はどうして私が聖女だと分かったのだろうか?彼も裏設定を知っていてとぼけているのだろうか?そのあたりも確認する必要があるようだ。この話は、一旦心のうちに留めることにしてアルフォ……ではなく大賢者アルフォードに別の話を持ちかけることにした。


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