10-9 『私の着せ替え人形となってもらいます』
今日の予定は由芽ちゃんと遊ぶことだ。少なくとも空が明るいうちは他のことは考えずに由芽ちゃんのことを考えよう。
朝食を食べ終わると早々に由芽ちゃんはお出掛け準備をしていた。「姉さんも着替えてください」と言う由芽ちゃんの目はぱっちりと開かれていた。常に眠たげな眼差しはどこへやら、遠足当日の子供のようだ。思わず微笑んでしまう。楽しそうで何より。
さて、どうやら予定は決まっているようなので、私が予定を考える必要はないみたいだ。早々にお出掛け準備を終わらせた由芽ちゃんを玄関で待たせているから、私も急がないと。
さすがに一人で出掛けるわけじゃはいから、パーカーと適当に合わせた服装なんてわけにはいかない。比較的動きやすいけれど街中に出掛けても由芽ちゃんに恥ずかしい思いをさせない程度のコーデにしておこう。
諸々の準備を済ませて玄関へとやってくると、由芽ちゃんはトランクケースに腰を掛けて待っていた。ずいぶんと大荷物だ。昨日はあんな大荷物、持っていなかった気がするけれど、もしかして家から先に郵送で送っていたんだろうか、わざわざ遊びに出掛けるためにあの大荷物を。
「由芽ちゃん、もしかして今回お泊まりに来たのって
「そうですね。これも──もとい、これだけが目的です」
これも、と口を滑らせたのは
しかしなんなんだろう、あの荷物。どこに行くつもりなのか聞いていないけれど、あんな大荷物を持って出掛ける場所なんて想像もできない。トランクケースを持って出掛けるなんて旅行くらいしか思い浮かばないけれど、そもそも由芽ちゃんはお泊まりでこちらに来ている。旅行には既に来ているようなものだ。
うーん、まあ考えても仕方ないかな。今日の私は由芽ちゃんに付き合うと決めている。よっぽどのことがない限りは好きにさせてあげよう。それに、行ってしまえばわかることだ。
「そうそう、姉さん。これから行く場所について、一言だけ言っておきます。先に言わないのは
トランクケースを片手に悠々と先を歩く由芽ちゃんはこちらに振り向くことなく背中を見せたまま言葉を投げてくる。
申し訳ないって、いったいどういうことだろう。
「今日、これから行く場所で姉さんには──私の
「……うん?」
ええっと、それはつまりどういうことなんだろう。わけがわからないまま、私は由芽ちゃんの後ろをついていくだけだった。
この時点で私はすぐにでも引き返すべきだったのだ──なんてことになるのか、はたまた楽しいイベントとなるのか。それは予想もつかないことだけど、やることは結局変わらない。
だいたい、引き返すなんて選択肢は用意されていない。いや、用意するつもりもないけれど。付き合うと決めた限りは由芽ちゃんが楽しめるようにする。それが今日の私の目的なんだ。
それに寂しがらせた(本人は一向に認めたがらないが)罪滅ぼしもしないといけないからね。
「ただ、姉さんにとって悪いことだけではないと思いますよ。きっと、これからの姉さんに必要な
「あはは、そうなんだ。それは楽しみだね」
「はい、楽しみです。とっても」
そう言えば昨日、私の本棚にある本を見ていたんだっけ。もしかしたら本当に私にとっても勉強になることなんだろうか。
そうなるとますますこれから行く場所が謎だけど、さて。
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