10-5 『一緒にお昼寝なんて』
散々な言われように少し落ち込むけれど、しかし確かに以前の私が無気力で周囲への興味も薄く、無関心とも言えるほどだったということはまあ、事実ではあるので三年ぶりに再会をした由芽ちゃんからすればつまらない冗談だと思ってもおかしくない。
いやでも、人生それなりがいいなんてことばかりを言っていた記憶はないけれど。そこまで冷めたお子様ではなかったはずだ。いくら中学生だからって思考回路が尖りすぎだ。センセーショナル過ぎる。冷めてはいたけど、年齢相応だったと思う。
ううん、由芽ちゃんから見た私はそう映っていたということかな。もしかすると私はあまり教育によくないお手本になってしまっていたのかもしれない。
由芽ちゃんは掴んだ漫画を数ページパラパラとめくってから無表情のままに片付ける。お気に召さなかっただろうか。私もそんなに読み返していない。買って一度読んだあと奥側に入れたままにしていたあたり、さほど思い入れもなかったんだろう。中身がどんな内容だったか、もうふんわりとしか覚えていない。
つまらなさそうな表情でタオルケットを巻いて抱えると、そのまま由芽ちゃんはベッドに自分の身体を投げ捨てる。ぽすんと由芽ちゃんの後頭部が私の左腕に乗っかる。「夕ご飯まで少し寝ましょう」と由芽ちゃんは身体を転がし私のほうを向くと、耳元で囁いた。言葉と同時にかかる吐息が耳をくすぐり、少しソワソワとする。
同じ布団に並んで一緒にお昼寝なんて、小さな頃以来だ。久しぶりに会ったことで由芽ちゃんは少し子供返りしているのかもしれない。小生意気なところもあるけれど、こういうところが可愛くて憎めないんだよね。甘え方が上手なのかな、手のひらで転がされている気もする。
五分もしないうちに由芽ちゃんから寝息の音が聞こえてきた。遠い地からやってきたところなんだから疲れているのは当然だ。身体は動かせないから、首だけ由芽ちゃんのほうへ向けるとあどけない寝顔を浮かべていた。
小さな頃から変わっていない。
いや、よく見るとリップが薄く塗られているか。つやつやてらてらと光っている。唇の乾燥よけかな。そういうところは気にするようになったらしい。会ってない期間の成長を感じさせる。
「っと、そうだ。今の間にもできることをやっとこう」
一分一秒でも惜しい。時間は長いようで短い、だから少しでも早く出来ることを増やしたい。それか心春のために──それからたぶん、自分自身のためになるから。
右手一本、せいぜいスマホを見るくらいしかできないか。そう言えば例の衣装作成をている配信者は一週間ほど配信を止めるって言ってたっけ。そうだ、どうせだから今の間に過去分のアーカイブを見てしまおうか。いつも最新の配信しか見ていないから、見始める前の分はあまり知らないんだよなぁ。
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