8-2 『部活動を設立する場合は生徒会へ申請用紙の提出をしてください』


「規則では同好会は三人から、部活動にするには五人からですね。我が校は生徒の自主性を尊重していますので、よほど乱れたものでない限りは申請すれば承認されるはずですよ」

「ありがとうございます、先生」


 早速行動を始めることにした私は職員室へと行き、おっとりとした、常ににこやかな笑顔が特徴であるクラスの担任、優谷美緒子ゆうたにみおこ先生に新規部活設立に関する話を聞くことにした。

 同好会なら三人から──つまり心春、私、咲良の三人がいるから、あとはそのよほど・・・だと思われない限りは同好会として設立もけっして難しくはないということになる。

 部活になる五人にはあと二人・・・・集めないといけないから現状では難しいけれど、同好会でもけっして悪くない。部活動よりも少なくなるとは言え、同好会にも部費は存在するということは確認済みだ。


「それにしても、高空さんにもやりたいことができたようで良かったです。先生、高空さんは入学以来いつもボンヤリとしているので何にも興味がない子なんじゃないかと実は心配していたんですが、今は目標に向かって頑張っているように見えます。安心しました」

「あはは……心配をおかけして申し訳ありません」


 安心したという言葉どおりに、にこりと微笑む先生とは対象的に私は苦笑いを浮かべながら軽く頭を下げる。

 無気力な振る舞いをしていたという自覚はあったけれど、心配されるほどだったとは思ってもなかった。死んだ魚のような目でもしていたのだろうか。


「いいんですよ、先生が勝手に心配していただけですから。大人というのはいつも心配をしすぎるもので、子供はいつの間にか成長してその心配を跳ね除けちゃうんですよ」


 面白いですよね、なんて言いながらにこにこと笑う。

 まるで勤務歴三十年、定年が近くもうすぐ学校を辞める予定のあるベテラン教師のような風格すらある発言だけど、先生はまだ二十代だ。干支が一回りほど離れているとは言っても教師たちの中ではまだ私たちに近いほうのはずなのに、これが大人か。


「それよりも、同好会ないし部活動を設立する場合は生徒会へ申請用紙の提出をしてくださいね。申請用紙は……ええっと」


 キャビネットを上から順に開けていくと、「ありました、これです」と先生は申請用紙を取り出してくれた。


「ありがとうございます、早速みんなと話して来ます!」


 申請用紙を受けると私は再び頭を下げ、職員室を早足に出ることにした。


「高空さん、頑張ってくださいね」


 背中に先生の応援を受けるのが少しだけむず痒かった。

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