8-1 『この集まりを部活にしたい、って言ったらどう思う?』
放課後の旧視聴覚室には四人の少女たちが集まっていた。私と心春、いつもの二人に加えて咲良、それから東雲さんだ。
「ふうううっ、心春ちゃんマジ天使! 一生愛してるYO!」
「ありがとうございますっ。続いてはユメガクの西亜ちゃんのサードソロ曲、Catch The Dream Never Cryいきますっ」
「おおおおおっ! 待ってましたーっ!」
観客東雲さん、キャスト心春によるライブごっこで盛り上がる姿は微笑ましい……いや、どうだろう。東雲さん、どこで用意してきたんだという心春の写真入り法被に桜色のペンライトを両手に二本ずつ装備していて、微笑ましいというレベルを超えている気がする。あとその法被欲しいんだけどいくらなのかな。
ちなみに咲良だけでなく東雲さんまで何故ここにいるのか、そして何故東雲さんが心春オタクになっているかと言えば。
『宮園さんに話すのなら青葉ちゃんにもお話しましょう。宮園さんと青葉ちゃんの関係性なら隠しきれないでしょうし、それならいっそ私の口からお話したいです』
ということだった。確かに咲良は隠し事をできるタイプではないだろうし、ましてやいつも一緒にいる東雲さん相手だと尚更だ。心春のプロファイリング能力を考えれば正しい判断だったんだろう。
とは言え、まさか東雲さんがこんなことになるとは思わなかったけど……一緒に寄り道したときも二人はすぐに仲良くなっていたから波長が合うのかもしれない。
「まったく、何してるんだか……アオバカ、アホバ、ばーか」
咲良は咲良で呆れたように……いや、面白くなさそうにかな、東雲さんを見ている。というか、ばーかって。
表情は乏しく見えるけれど、言動から全体的にわかりやすいよね。
「あはは、楽しそうでいいんじゃない?」
「真宙はいいの、鷺沢が取られてるけど」
「心春はアイドルだからね、ファンが増えることはいいこと──」
「きゃーーーっ! 投げキッス!! 青葉に投げキッス!!! ふおおおおおっ!!!!」
「──いいこと、だよ……っ!」
「顔が引きつってるけど」
だって投げキッスはズルい。いや、曲の振り付けだから仕方ないんだけど、私だってされたことないのに東雲さんズルい、ズルいズルいっ。羨ましい。いやもう妬ましい。というか東雲さん、目隠れ小動物系に見えて曲の振り付けにかこつけて自分に投げキッスさせるなんてしたたかな。敵認定しそうだ。
とは言え、うん。嫉妬の目を忘れてみると人の曲とは言えファンの前で歌って踊る姿は、格好こそ制服のままだけどまるでアイドルのようだ。
「……そっか、衣装だ」
咲良が協力してくれるおかげで目下のところ曲の問題はどうにかなったけれど、衣装に関しては一切動いていない。
購入、レンタル、色々と手段はあるけれども、前にも調べた通り、学生のアイドル活動の場合、衣装も一から制作することが重要らしい。まあ、大会に出たりするわけでないならそこまで気にすることなく衣装をレンタル、購入するのも手段ではあるけれど。
ただコスプレと違って実際に歌って踊るとなるとレンタルはあまり選択肢に入れられない。万が一壊してしまった場合、下手をすると購入するよりも損失が出るかもしれない。
ただ、購入するとなると金額が馬鹿にならない。しかもオリジナリティを出そうとオーダーしようものなら高校生が支払える金額を超えてくる。大会に出ているような学生アイドルの中には部活動として活動しているものもあるらしいし、部費をアテにすることができるらしいけれど。
もちろん、そうなると実績は必要になってくるんだろうけど──うん、そうだな。ちょっと真面目に考えてみるか。
……ちなみに。
「心春はこの集まりを部活にしたい、って言ったらどう思う?」
「ユメガクもアイドル部ですから、むしろ大歓迎ですっ」
よし、心春も問題なさそう。
なら、とりあえず動いてみるか!
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