7-3 『今度カラオケに連れて行ってくださいっ!』
咲良とのやり取りの内容を伝えようと、その日の夜に私は心春と画面通話をしていた。心春の寝間着姿はお泊り会でも見たけれど、今日はその時とは違って部屋着のような服装だ。ゆるだぼ系のカーディガンとオフショルダーのTシャツと隙の多い着合わせをしており、家ならではの少し気を抜いた姿だ。
お泊り会ではパジャマを着ていて、ボタンをきちんと上までしめていたことを考えるとあれは余所行き用だったのかもしれない。
家でだらけている心春も見てみたいから今度は心春のお家に泊まってみたいな。
「──っていうわけで、なんと咲良が心春のために曲を作ってくれるって話になったんだけどね」
『本当ですかっ? そんな、曲だなんて本当にアイドルみたいじゃないですか……! そ、そうだっ、練習、練習をしなくちゃいけませんっ。真宙さん、今度カラオケに連れて行ってくださいっ!』
「あはは、うん。いつでもいいから一緒に行こうか」
曲を貰えると聞いてはしゃぐ心春がとても可愛い。なりたいという気持ちだけで漠然としていたものが、グッとイメージがしやすくなったのだろう。いつにも増して嬉しそうだ。夢想するように言葉の語尾を跳ねに跳ねさていて、口調だけでも嬉しい気持ちが存分に伝わってくるから微笑ましい。
おまけにスマホを持つ手を上下にせわしなく動かしているから画面が物凄い揺れている。心春の顔が近づいたり離れたりしていて、ちょっと面白い。あ、近すぎ──『あいたっ』やっぱりぶつけちゃってる。ぶつけた鼻頭がほんのりと赤くなっているの。
これほど喜んでいる姿を見るといくらでもカラオケに連れて行ってあげたくなる。咲良には本当に感謝ばかりだ。反面、ちょっと……いや、かなり嫉妬しそうだ。心春の喜ぶ姿はとても可愛いし、嬉しいことなんだけど、それを引き出したのは咲良が曲を作るという話なのだから、嫉妬するし、悔しさすらある。
……うん、やっぱり咲良には音楽について教えてもらおう。
私だって心春の笑顔の理由を独占したい!
って、そうだ、話はそれだけじゃないんだった。
もうひとつ──
「ただ、そのことで話があってさ。……その、咲良に心春がアイドルを目指しているって話をしても大丈夫かな?」
実はあの後、こんなやり取りがあったのだ。
『曲を作るにあたって、できれば目的を教えてほしい。もちろん無理にとは言わないけれど……ただ、鷺沢に贈るための曲だとしても、
『……ごめん、それは少し待ってもらってもいいかな』
『構わない。急かすつもりはないから、ちゃんと鷺沢とお話をしてきてからでも大丈夫だよ』
ということで、心春がアイドルを目指しているという話を咲良に伝えていいのかという話に繋がるわけだ。
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