6-1 『イメージが決まったから次は撮影の段階』


「一応こういう感じでやろうかなっていうイメージなんだけど、どうかな宮園さん」


 心春とのお泊まり会をした日から時間が経ち、自分なりに作り上げてきたイメージを宮園さんに伝える。簡単なイメージイラストを補填するようにテキストを大幅に追記して補足する形で作った資料を作ってみた。伝わるといいけれど。

 宮園さんは文字を追いかけながら、時折頷いてみたり、首を傾げたりして真剣に読んでくれる。

 少ししてから資料と向き合っていた顔を上げると、宮園さんは「うん」と頷いた。


「いいと思う。……というより、高空は凄いね。私にはどうしてもできなかった、曲と企画自体のイメージの乖離をうまくまとめてる。正直私の企画の原型は残らなくても仕方ないと思ってたくらいだった。渡した後から思い返したけど、結構無茶苦茶書いてて、高空には申し訳ないと思っていた」

「あはは……私だけの力じゃないから、凄くはないんだけどね。正直に言うと心春にもずいぶんと相談したし」


 心春にPR動画の話をしたことを宮園さんには既に伝えてある。

 どうせ心春にはバレるだろうから、と頼まれたそのときに言っていた。すぐに納得していたので、心春の評判は他のクラスにも伝わっているようだった。やっぱり心春って目立っているんだはあ、と感心したものだ。


「ううん、鷺沢の手を借りたとしても、形にしてまとめたのは高空、あなた自身だよ。こんなことを私が言える立場ではないかもしれないけど、高空は十分に凄いよ。誇っていい」


 宮園さんが微笑みながら素直な称賛をくれるから、少し照れてしまう。それから、その小さな笑顔にドキッとさせられる。

 短い付き合いだからというのもあるけれど、宮園さんが表情を動かすところをあまり見たことがなかったし、それどころか笑顔はもしかしたら初めて見たかもしれない。


「宮園さん、笑顔がとっても可愛いんだね。もっと見てみたい」

「…………はぁ」


 笑顔が一点、深い溜め息を吐き出しながら興味なさげな無表情に変わる。

 そっぽも向かれるし、どうやら気を害したかもしれない。


「まったく、私にまでそんなこと言うなんて高空って軽薄。この間も鷺沢にたくさん言ってたし、あんまり気安く誰彼構わず可愛いなんて言ってると、誰にでも言う人だって思われるよ」

「け、軽薄か……それ、心春にも言われたなぁ」


 まさかこの短期間に人生で言われた経験のなかった軽薄という言葉をまた聞くことになるとは。


「そんなことより撮影の話。イメージが決まったから次は撮影の段階。私はいつでもいいから、高空の都合に合わせる」


 宮園さんはこちらに向き直るとあっさり会話を動画の話に戻す。ここ最近気がついたことだけど、私は結構話を横に逸らしがちだ。目的意識を持って話すなんてそうないし、友達同士の会話であれば二転三転することは当たり前だけど、誰かと共通の作業をするには合わない。だからこれくらいあっさりと切り替えしてくれたほうが作業をするには合っているのかもしれないかな。

 まあ、せっかく仲良くなったし、一緒の目標を目指すんだから淡々と進めていくだけだと少し寂しい気もするけれどね。

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