2-2 『だって作曲も衣装作りも、やったことないよそんなの!?』


『私は心春の役に立ちたい』


 格好良く言ってみたのはいいけれども、じゃあ具体的にどうすれば心春の役に立てるのだろうか。まずはそこからだ。ノートを開いてアイデアをいくつか記述していく。ノートはすぐにありがちなものばかりで埋められていくけれど、まずはなんでもやりたい。目的はハッキリしているんだからあとは方向性だ。

 下手な鉄砲も数撃ちゃ当たるって言葉もある。だからなんでも書いていく。

 たとえば公式SNSを立ち上げて運営してみるとか。そこで心春のことを宣伝していこう。

 動画配信サービスのチャンネル運営もいい。機材はまあ、そのうち揃えていきたいけれど最初のうちはスマートフォンでどうにかなるだろう。

 いつかはライブをしてみたり。そのためにはステージを借りるための交渉も必要か。私が交渉できそうな場所なんてあるのかな。校内に限られてきそうだけど心春は学校ではまだ私以外には秘密にしているから別の場所を探したほうがいいかな。


 …………なんかこう、夢想だな。現実味がない。いや、別にどれもやろうと思えばできる。だけど“やれるだけ”だ。


 小説を書いてみたり、漫画を描いてみることはできてもそれが人に読まれるとは限らない──そういう話だ。

 ただ心春には何も問題はない。心春なら、場所と機会さえ用意できればどんなところでも咲けるはずだ。……だったらそれをどうにかするには、やっぱり私が頑張るべきなんだろう。

 つまり、場所や機会を用意することだ。


「……ええっと、学生、アイドル、運営、やり方っと」


 とりあえず先人の知恵を借りよう。こういうときのためにインターネットがあるんだ。


 …………………。

 ………………………………。

 ………………………………………。



「なるほど。とにかくまずは曲作り、衣装作りからか」


 確かにそれはそうか。心春というとびっきりのアイドルがいても、曲が無ければ歌えないし、衣装が無ければ映えない。

 曲はカバーでもいいし、衣装だってレンタルでもいい。無理をする必要はないという意見もあるけれど、しかし学生でアイドルをやっているというニーズはどうやら部活動的な要素も多分に含まれているらしく、自作した曲や衣装があったほうが“ウケ”がいいようだ。定期的に開催される大会のようなイベントも参加条件はオリジナルの曲と衣装を設定しているものが多いらしい。


 しかし部活動か。つまりアイドルも甲子園や国立競技場を目指す時代ってわけだ。どうやら思っていたよりも学生活動じみた一面もあるらしい。……あとこれも知らなかったことだけれど、スクールアイドルモノというジャンルは元々人気アニメから派生したらしく、今ではちょっとしたブームなんだとか。

 まあブームとは言ってもその筋では、という一言が添えられる程度でまだまだ一般的な認知度は低いみたいだけど。


「作曲、衣装作り……え、どうしよう!?」


 心春のサポートをしたいと言ったその日のうちから私は躓いてしまった。

 ──だって作曲も衣装作りも、やったことないよそんなの!?


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